ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 店ナビいしかわ > 大好きな音楽で商店街に活気と魅力を 小さな楽器店がチェンジの風を起こす!-楽器の店 ポンポロプー 

本文

大好きな音楽で商店街に活気と魅力を 小さな楽器店がチェンジの風を起こす!-楽器の店 ポンポロプー 

印刷ページ表示 更新日:2018年4月3日更新

楽器の店 ポンポロプー

ポンポロプー

地元の楽器店で27年間営業マンとして勤務した島崎克宏さんは、その経験を基盤に2009年に独立し、生まれ育った白山市中町商店街で楽器の店「ポンポロプー」をオープン。中学生の時からギターにのめり込み、プロのギタリストを目指し練習に明け暮れていた自らの青春時代の情熱を今も胸に秘め、楽器の楽しさを若者からシニアまで幅広い人たちに伝える店づくりに邁進する島崎さんにお話を伺った。

ギターとの出会いが人生の道しるべに

島崎さん島崎さんとギターとの出会いは中学2年生の時に遡る。叔母から1本のギターを譲り受けたのがきっかけで、ギターの魅力に取り憑かれ、高校に入るとフォークソング全盛の時代とあって、フォークソングの洗礼を受け益々のめり込んでいく。大学に進むと本格的にギターを学び、プロを目指したものの、プロの世界のハードルの高さを痛感し断念。そんな時、たまたま金沢の大手楽器店の求人募集があったことから、地元に戻って就職し、楽器を販売する営業マンとしてのキャリアがスタートする。その後、店長として長年店頭に立ちながら、いつかは自分の城を持ちたいとの夢は持ちつつも、なかなか縁がないまま27年間が経過する。そんな2009年のある日、地元で化粧品店を営む実家の隣の洋服店が閉店し、空店舗になるとの情報を耳にする。実家の隣のビルで店が持てるとはなかなかないご縁と思い、すぐに勤めていた楽器店に退職届を出し、自分の店をオープンする準備に取りかかる。島崎さんが高校生の頃、商店街に1軒だけあった楽器店のおやじさんが、自分たちに楽器と親しむ時間と場所を無償で提供してくれたことが今も忘れられず、あの時の恩返しを地元の若い人たちにしたいとの思いが形になることに。

 

開店までの道のり

隣のビルのテナントとして営業していた洋服店が閉店し、ポンポロプーがオープンするまでの8ヶ月あまり、「楽器店をやりたいのなら応援するよ、是非やってくれ、その間の家賃はいらないから押さえておくよ」との大家さんの粋な計らいがあった。これも隣同士の長いご縁のなせる業。27年間楽器を販売してきたとはいえ、自分が楽器店をやるとなればそれなりの品揃えをしなければならない。マーチンやギブソンといった一流のギターは1本50万円~100万円する。安いギターでも数万円はするわけで、そんな商品を何十本も揃えるとなれば、それなりの資金も必要で、退職金や蓄えをすべて掃き出して準備を整える。店舗の改装費用は、白山市の補助金等を活用し、商店街活性化の一翼を担う店づくりに意を尽くす。


内観 内観

わくわくする楽器店、発信する楽器店

「単なる楽器店はやりたくなかった。金沢市内に大手資本の楽器店がいくつかあるが、みんな金太郎飴で似たり寄ったり、私にしかない個性を出したかった。この商店街で一見さんを確保しようと思っても、片町や竪町と異なり、人通りが少ない。インターネットを活用しての発信が不可欠と考え、ホームページを充実させ、全国規模の通販サイトにも出店し、広く発信してきた結果、今ではお客さんは全国津々浦々にいます」と胸を張る。そのため、売上の3割が白山市内の顧客、7割は市外とネット通販という状況だ。なかでもアメリカのマーティンギターのオーソリティーディーラー(プロショップ)として立ち上げたことから、自ら渡米して商品を直に買い付けることも。と同時に、商品構成も特化した店づくりにしたことで、これまで東京や大阪まで行かないと見られなかった本物の商品が、白山市のポンポロプーで手にとって見られるとあって、北陸三県からヘビーユーザーが訪れるようになり、50万円~100万円クラスの商品が売れ、彼らにとってポンポロプーは夢の空間となる。

ギター

ネット販売の売上は大きいものの、店頭での接客が第一

「ネット通販がどんなに伸びても、商売の原点はお客さんの顔を見て、お客さんに納得してもらって販売し、買って良かったというお客さんの笑顔を見ること」と島崎さんは強調する。自身が中学2年の時にギターと出会った感動は今も忘れられず、「中学生や高校生が来店し、初めて楽器を購入した時の最高に嬉しそうな笑顔を見ると、30年、40年経っても何かしらその子の思い出に残るような出来事として位置づけたい。そのためには、商品を置かないで商いをすることは考えられない」と、店頭販売の魅力を熱く語る。高級ギターといえども価格競争があり、「お客さんから他の店で2割引きになっているからと言われても私は値引きしません。安い方がいいお客さんには、そっちへ行ってもらえばいい。その値引き分以上の付加価値をうちの店はお客さんに提供しています」と自負する。「ネットでもっと安く売っているけど、ポンポロプーで買うわ」と言ってくれるお客さんにとって、この店は値段以上の魅力があふれているのだ。

音楽教室の充実は商いの要

30年近く音楽業界に身を置いてきた島崎さんには、何物にも代え難い人脈という大きな財産がある。そのネットワークを最大限に活用してスタートしたのが音楽教室である。音楽教室は先生が確保できないと成り立たない。その点はお手のもので、現在は20コースあまりの教室があり、小学生からお年寄りまで100名あまりの生徒が通っている。店舗の2階にレッスンスペースが3室あり、さらに隣のビルの2階の倉庫が空いていたことから、そのスペースを50名程度が収容できるホールに改装した。楽器を買えば練習しないと上達しないため、自然な流れで音楽教室に通い、上手になれば人前で発表したくなるわけで、発表会をするホールも自前で完備したことで、楽器にかかわる一連の流れが、自らの店ですべて完結できることに。何とも凄いの一語に尽きる。


音楽教室 教室

自らがギターを演奏し、音楽を語れることが強み

フォークソングで育った50代から60代の顧客がメインであるだけに、その人たちが来店した時、若い店長ではフォークソングの話ができない。島崎さんはフォークソング世代であると同時に、自ら演奏していただけに知識も豊富な上に、その場でギターを演奏してみせることができることが大きな強みになっている。「楽器を販売する者は、自分自身も音楽をやり、楽しさを発信していかなければ、本当の意味での楽器の楽しさをお客さんに伝えられない」というのが島崎さんの信念。「店を持ってからの8年間は、地元の楽器店で勤めた27年間よりも濃密で、いろんな人に助けてもらいながら、音楽教室、ライブ企画、市の音楽イベントのプロデュース等々、基本的には自分一人で何から何まで走り続けてやってきた充実感は感慨深い」と述懐する。

ホールでのライブは人脈が鍵

テレビに出るようなメジャーなミュージシャン以外にも素晴らしいギタリストはたくさんいる。そんな人たちは自ら地方を公演して回り、自らCDを手売りして地道な活動をしているが、なかなか地方で公演を引き受けてくれるところが少ないのが現実。そんな中で、白山市に行けばポンポロプーがあるというのは、彼らにとって救世主的存在に違いない。とはいえ、受ける以上は会場が満席になるよう、ホームページで情報発信し、チラシを配り、知らない人たちにいい演奏を聴いてもらうことも大切な仕事と肝に銘じ、お客さんを集める努力を惜しまない。驚くなかれ、お客さんの半数は富山県と福井県からの人が占めるという。楽器販売においてもライブの集客においてもインターネットが大きく貢献していて、中には東京や大阪から好きなアーティストのライブを聴きに来る追っかけの人も多く、金沢観光とのセットで人気が高いようだ。

気が付くと商店街のおかみさんユニットが誕生

コンサート3中町商店街では、おかみさんたちが毎月いろんなテーマで勉強会を行っている。2010年には島崎さんにウクレレの体験レッスンをして欲しいとの要望があり、ウクレレを10本ほど持参し、30人あまりのおかみさんに体験してもらった。その中の数人がウクレレにはまり、音楽教室で本格的に習いたいと、自分のウクレレを購入してレッスンする日々が始まる。とはいえ、一人で練習していても励みがないため、せっかくやるのなら商店街のイベントに参加できるようなウクレレユニットを作ろうとなり、中町商店街のおかみさん4人でウクレレユニット「ナカレレママーズ」を結成。島崎さんの指導で練習を重ね、白山市のイベントに参加すると、やんやの喝采を浴びるまでに。そうした活動が認められ、3年前には石川県女性チャレンジ賞を受賞。「私の店が中町商店街に根付いた一つの証しだと嬉しく思っています」と島崎さんは頬を赤らめる。今年結成5年目を迎える「ナカレレママーズ」は、4人だけでは寂しいからメンバーを増やそうと、参加者を募集したところ地元を中心に15人も集まり、千代尼通り商店街の「はくさんCHIYOレレオーケストラ」が結成され、月に2回練習を重ねている。今では、県立音楽堂で毎年開催されるウクレレオーケストラまつりに参加することを目標に掲げるまでになり、おかみさんたちの生き甲斐創出にもポンポロプーが大いに貢献している。

 

 

 

 

小さくてもピリリと個性ある店

「ギターを弾くことについては精一杯やり切ったから、これからは音楽をやる若い人たちをサポートしていきたい」としみじみと語る島崎さん。「ポンポロプー」という店名は、打楽器のポン、ギターなど弦楽器のポロ、ハーモニカのプー、これらを合成したもので、個性的な島崎さんの人間味が溢れている。楽器を購入することに始まり、演奏会を開くところまで、一連の流れをすべて自分の店で完結できることは楽器店として最大の強みである。なおかつ「ポンポロプー」が商店街にできたことで、おかみさんのウクレレユニットが生まれ、それがオーケストラに発展し、街の活性化、魅力創出に多大な貢献をしている。もちろん、そんなことになるとは島崎さんは思ってもみなかっただろうが、人とのつながり、コミュニケーションを大切にし、プロ並みのギターテクニックと人を引きつける話術で周囲を巻き込みながら、中町商店街で地道に商いに邁進してきた島崎さんの努力の賜物に他ならない。

店舗情報

ポンポロプーの外観

店名 楽器の店 ポンポロプー
住所 白山市中町30
TEL (076)214-6236
URL http://pon-polo-pooh.com/