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石川の伝統ある食文化を 次代につなぐ商いに邁進ー有限会社 安新

印刷ページ表示 更新日:2019年2月1日更新

 

有限会社 安新

タイトルバナー

石川県には海の幸を使ったさまざまな珍味があるが、その中でも左党にとって別格とも言える極めつけの一品は、全国でも石川県を含め数県でしか製造販売が許可されていない「ふぐの子糠漬け・粕漬け」ではないだろうか。石川県では、金沢市の金石地区と白山市の美川地区などで、ふぐの糠漬け・粕漬けが製造販売されており、とりわけ、美川地区には知る人ぞ知る有名店が、自慢の味を看板に繁盛している。そんな中の一軒である(有)安新の安田仁志社長に商いのこだわりを披瀝いただいた。

戦後間もなく「安新」創業

安田仁志さん終戦を迎え、帰還してきた安田社長の父親が、「安久」の屋号で江戸時代から続くふぐ糠漬け・粕漬けの老舗である本家で修業を積み、暖簾分けしてもらう形で独立したのが「安新」の始まり。本家に対して新宅として商いをすることから、安久の安に新を付け「安新」の屋号で、昭和23年に創業する。以来、70年あまりの歳月を経て、現在の商いは、卸売が7割、小売3割という比率。卸しは、県内はもとより福井、京都、大阪、東京の食料品店・スーパー・飲食店などが得意先。県外の取引先は、福井にある食品問屋が「安新」の商品を仕入れ、そこから県外の食料品店等に流通する形で広がっている。県内では、アルビスやアルプラザ、小松のすみげんなどで、同社の糠漬けや粕漬けなどの商品を購入することができるが、品揃えは美川の本店が一番。10年あまり前に後継者である3代目が入社し、親子二代で伝統の食文化を守っている。

 

 

昔ながらの漬け込み風景は圧巻!

「安新」では、ひと冬に凡そ2000樽の糠漬けや粕漬けを漬け込んでいる。今のご時世、漬け物樽と聞くと、プラスチック製で、上に載せる重石もプラスチックのカバーが付いたものを想像するが、同店の漬け込み場に行って驚いたのは、昔ながらの木樽が整然と積まれ、しかも重石は全て昔から使われている丸みを帯びた自然の石。この光景は壮観なものがある。市内の小学生が時々社会見学に訪れるそうで、そんな時には子供たちが漬け込み場の木樽と石の重石が整然と並ぶ光景に感嘆の声を上げるという。漬け込み場には、昔から自噴している地下水が年間を通して安定した水温で出ているため、冬場も比較的温かく、寒い冬場の作業も助かっているとのこと。原料となる魚について伺うと、鯖の大部分は静岡県の焼津港から、鰯は鳥取県の境港から、フグは長崎沖ならびに地元の七尾や輪島で水揚げされたものを使っているが、昨今の地球温暖化や中国の消費量拡大の影響で、漁獲量が減少傾向にあり、これから先どうなるかという不安要素がある。


贈答品 店内

独自の漬け込み法で時代のニーズに対応

昔は魚を漬け込む際に大量の塩を使用することが基本だったが、時代と共に味覚や嗜好が変化し、塩分の摂取し過ぎが健康を害することから、塩の使用量は魚が傷まない程度の最小限に留めている。塩を減らしても昔ながらの食味や旨味を引き出せるよう試行錯誤を重ね、「安新」にしか出せない風味の商品づくりに日々邁進している。美川地区には6軒の同業者があるが、それぞれに微妙に仕込み方が異なることから、6軒6様の異なる風味の商品が生まれ、それぞれの店の味を好むファンがいる。「お客さんからおたくの糠漬けはあまり塩辛くないから好きだとの声をいただくのが一番嬉しい」と安田社長は顔を綻ばす。

ふぐのぬか漬け

年2回の大廉売市で顧客に感謝を

毎年夏と冬、お中元とお歳暮の時期に合わせて年2回の大廉売市を開催している。高級な珍味類が2割以上安くお得に購入できるとあって、とりわけ12月の大廉売市は、折り込みチラシを入れると、早朝から行列ができ、店内が大盛況になるほどお客さんが押し寄せる。一番売れるのはやはりふぐの糠漬け・粕漬けで、御歳暮の時期でもあることから消費単価も上がり、一番の繁忙期となる。この大廉売市に来てくれたお客さんが、「安新」の味のファンになり、常連客になってくれるきっかけづくりにもなっている。

お客さんの立場になった商品開発

お客さんに買ってもらわないことには商売は成り立たない。昔は、ふぐの糠漬けを漬け込んだ木樽のまま、あるいは1本そのままの形で売っていたが、それだとお客さんが食べる時に、糠を落とすのに手が汚れ、切る手間もかかる。そこで、パッケージを開けたらすぐ食べられるよう、糠を落としてスライスした小分けパックにして販売するように。店側は手間がかかるが、それによってお客さんは楽ができる。常にお客さんの立場になって商品の提供方法を考え、喜んでもらうことに余念がない。こうしたことは、スーパーで袋詰めになったカット野菜が売れているのと同じことで、時間短縮と無駄が出ないというメリットを顧客が求めており、そうしたニーズにいち早く対応してきている。「面倒とか、手間がかかるということではなく、いかにして売るか、お客さんが買いたくなる商品を提供するか、工夫しないと売れない時代であることを常に念頭に置いて考えています」と意欲的な安田社長。


漬け込み桶 鯖のぬか漬け

3代目が見据える次代に向けた商い

3代目は、大学卒業後、他業種の仕事を経験したのち、10年あまり前に入社。独学で自社のホームページを制作し、全国に向けて情報発信を始めている。フェイスブックでも情報発信し、少しずつ効果が現れてきている。3代目のアイデアで、子供たちに魚に興味を持ってもらい、来店動機にもつながればとの思いから、自社で魚シリーズの缶バッチを制作し、商品を購入してくれた顧客にプレゼントしている。顧客層は若い人たちではなく、50代以上の人たちが中心のため、高齢化が進む時代にあって、いかに若い人たちに食べてもらえる商品づくりをしていくか。と同時に、時代とともに若者がきつい・汚れる仕事をしたがらなくなってきているだけに、次代の職人をいかに育てていくか、この二つがこれからの大きな課題である。

地元のお客さん第一の商いに徹す

贈答品卸の方では県外にも出しているものの、「何と言っても地元のお客さんがあっての商いであり、地元のお客さんを大切にし、地元のお客さんに愛され、支持される伝統の味を守り続けていきたい」と決意を新たにする安田社長。3代目のネットを活用した新しい時代の商いの手法も採り入れながら、100年、200年と受け継がれていく、地元に愛される息の長い守成の商いに、親子で力を合わせ邁進してもらいたい。

 

 

 

 

 

 

 

店舗情報

外観

商 号 有限会社 安新
代 表 安田仁志
住 所 白山市美川永代町ヲ134
TEL 076-278-3353