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歳月を重ねる度に愛着の湧く 温もりある無垢材のおくりもの  (有)生活アート工房

印刷ページ表示 更新日:2021年1月29日更新

(有)生活アート工房

生活アート工房

コロナ禍の巣ごもり生活の中で、テレワーク用の机と椅子が売れている。と同時に、平日の在宅時間が長くなったことで、部屋の模様替えや家具の買い換えなどの需要も増えている。家具と言えば、家具問屋から仕入れた家具を販売する店が大部分だが、自社で木材の選定から、オリジナル家具の製造、販売までを一貫して行っている家具店が、小松市にある有限会社生活アート工房だ。無垢材を使った手作りの家具を販売するこだわりの商いについて、南出謹七社長にお話を伺った。

 

こだわりのお店を訪問

小松市河田町の長閑な田園風景の中に個性的な3階建ての建物が目に止まる。
その1階が生活アート工房の小松本店。正面エントランスは、大きなガラスが入った木製の引き戸で、何とも言えぬ温もりを放っている。扉を開け一歩中に入るや、まだお会いしていないが、南出ワールドとしか表現する術のない特有の空気感に包み込まれる。さらに歩を進めると、奥の一角に鎮座するスピーカーから得も言われぬ心地よいBGMが溢れ、α波の分泌を促すかのようなリラクゼーション空間が広がる。
あまりの心地よき音に、よくよくスピーカーを見ると、音響マニアなら知らない人がいない、世界的高級スピーカーTANNOY(タンノイ)とMcintosh(マッキントッシュ)の恐らく現在では入手困難な逸品。スピーカーに至るまで徹底したこだわりである。


生活アート工房 生活アート工房  

 

家具作りを始めた経緯

学校を卒業すると、機械メーカーに就職しエンジニアとして働き始めた南出さんだったが、子供の頃からモノづくりが好きだった性分に合わず、造作家具の会社へ転職する。
家具作りは好きな仕事で技量もあったものの、人に使われて働くサラリーマン的生活が性に合わず、木材の選定から商品を納品するまで全て自分一人でやりたいと思い始める。
思い立つと即実行する性格ゆえ、ほどなく木材の選定から家具の企画・デザイン・製造・販売を一貫して行う「生活アート工房」を1995年に創業する。とはいえ、作業場だけあっても一般の人に自社商品を知ってもらうことができないことから、その翌年、小松市白江町にて生活アート工房ショールームを開店。
地元の人を中心にオーダー家具の注文を受け、木材の目利きから仕上げまでを全て一人で行う家具工房兼ショップとして、仕入れた家具を販売するのとは一線を画す商いを本格的にスタートする。
当時は、インターネットもまだない時代で、世間に自分の作った家具を知ってもらう手段として、地元のギャラリーを借りて家具の展示会を開催していた。

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家具を卸すのではなく通販で直接販売

独立した当初は、東京国際家具見本市に5年間、自社の家具を全国に卸すことを目的に出展していた。
もちろん来場者は生活アート工房のことはほとんど知らない人ばかり。それにもかかわらず、この見本市に出展している店の家具ならと信用して買おうとしてもらえることに気づき、そうした看板を有効活用することの大切さを実感する。
5年継続して出展してみたものの、卸しにあまり可能性が感じられず、そろそろ出展を止めようかと考え始めた頃、宅配便が急速に普及してきた時代背景に後押しされ、県外は卸しではなく、宅配便を活用して顧客に直接小売りする方向に舵を切る。
幸いにして小松市は、日本列島のほぼ真ん中あたりにあることから、宅配便で全国の顧客に商品を届けるのに理想的な立地で、宅配便の利便性との相乗効果で、同社の全国市場開拓は、順風満帆の船出をすることとなる。

     

生活アート工房 生活アート工房

 

商いの方向性を見極める

文字通りゼロからのスタートだっただけに、常にハングリーな状態が当たり前と捉えながらも、商売であるからには利益も出さないといけない。そのためには、家具の製造から販売までをシステム化し、一つの事業として成り立つまでに持っていくことが不可欠との熱い思いを抱き続けていた。
現実問題として、家具は商品として大きなものが多く、重さもあるため、運搬作業においても一人で運べるものに限界があった。そこで、会社を組織化し、企業としての基盤固めと同時に、右腕となる職人を育てることに力を注ぎ、現在は5人の家具職人を抱える。
当然のことながら職人が育ったことで、自らは職人の仕事から離れ、経営に専念できるようになり、家具の企画やプロモーションが主要な仕事となる。

生活アート工房 生活アート工房

 

顧客の生活の場にビジネスの発見あり

創業から10年あまりは、家具職人として自らオーダーを受けた家具を作り、出来上がった家具を自ら顧客の所へ納品しに行っていた。「そのおかげでお客さんのことがよく判った。」と述懐する。その真意は、どんな暮らし方をしているのか、どんな家族構成で、どんなライフスタイルなのか、自分の目で家具が使われる現場を見ることができ、仕事をする上で大きな収穫になった。例えば、納品時に、この場所にこんな家具があったらいいのではないか、そんな提案も自然とできるようになる。インテリア雑誌で見るのとは全く異なるライフスタイルを、行く先々で見られたことは、職人として貴重な経験であり財産になっている。
「新しい家具を提案するヒントがお客さんの家のあちこちに点在しています。仕事とは問題解決であり、その問題をお客さんが提案してくれるわけで、こんなにありがたいことはない。」と顔をほころばす。
時には「私がいいと思ってもお客さんはいいと思わず、私がどうかなぁと思うことにお客さんが感動することもあり、自分は全て判っている気になっていたが、それが間違いであることをお客さんから教えられた。」と苦笑する。

知名度アップのため東京・代官山に出店

2005年国際家具見本市アワード・2008年グッドデザイン賞受賞を機に、全国生活情報誌に自社の広告を掲載したところ、問い合わせてきた北海道のお客さんから「近いうちに出張で東京に行くから、東京に店はないの、家具を見られる所はないの?」と言われたことが、事業展開の新たなページを開く契機となる。
それを機に、東京出店の準備にとりかかり、7年前の2013年、東京恵比寿に直営店「生活アート工房 代官山店」をオープン。
家具を自分の目で見て、手で触って感触を味わいたいという要望が多く寄せられ、写真で見るのと現物を直接見るのとではやはり感じ方が異なるため、自社のアンテナショップとして、広告宣伝の代わりにもなると考えての東京出店だ。
東京に店があることは、企業イメージにとって大きなプラス効果を生み出し、同社の商品に対する顧客からの信頼・安心に一役買っている。
出店から7年が経過し、今ではすっかり街並みにも溶け込み、得意客も増え、石川だけでなく東京に店があることの強み、宣伝効果をしみじみと感じている。これは、生活アート工房が無垢材にこだわった手づくり家具店だからこそ実現できたこと。何よりも東京の地で継続して店を維持できていることが、商いにおいて大きな信用につながっていることは言うまでもない。
 

生活アート工房 生活アート工房

代官山店の外観と店内

 

コロナ禍でもオンラインショップは売上に貢献

オンラインショップは8年あまり前にスタートしたとのこと。スタート当初からさまざまな種まきをやってきたことが、ここへきて花開き、コロナ禍の令和2年は、オンラインショップが売上に大きく貢献し、リモートで商いができることが大いにプラスに作用している。
ステイホームの時間が長くなったことで、家の中のインテリアを見直そう、リフォームしようという動きもあるようで、コロナ禍の影響はほとんどなく、看板商品の「すのこベッド」を中心にサイドテーブルなどが人気とのこと。
近年は、小松市のふるさと納税の返礼品にも選定され、行政からのお墨付きを戴いたことに感謝することしきり。すのこベッドは、一括で購入するには少し思い切りが必要だが、同社にはお試ししながら購入できるレンタル制度もある。(詳細はホームページをご覧いただきたい。)ちなみにオンラインショップの購入者の9割以上が県外、地元は1割弱とのこと。

 

豊かさ感じる無垢材の贈り物

今のご時世は、モノがいいのは当たり前だけに、「お客様の望むものをどんな形でお客様に提案し、その企画提案したものをいかに商品として形にするか、差別化・独創性・無垢材にこだわり、これからもってやっていきたい。」と持論を披瀝。
どんなにいいものでも、目立たなかったら、知らなかったら買えない。その意味で、ネット広告やインテリア雑誌への広告宣伝にも力を入れている。
南出社長曰く「ブランドには、地域ブランド、カリスマブランド、ショップブランド、商品ブランドの4つあるが、その中で自社の規模でできるのは何かと考えた時、すのこベッド、畳ベッドに代表される商品ブランドで生き残る会社に育てていく道を選択した。」と振り返る。その判断が奏功して今日の生活アート工房がある。
「1995年にスタートし、ショールームを持った時に無垢材のことやオイルフィニッシュについて説明しても、お客さんは首をかしげた様子でしたが、2007年に建築基準法が変わり、ホルムアルデヒド対策で塗装や接着剤の基準が変わり、そうした知識を住宅メーカーが一般に広めてくれたおかげで、無垢材が身近なものになり、お客様が予備知識を持って来られるので、商売がしやすくなった。」と顔を綻ばす。創業から四半世紀を経て、これからも顧客の生活をアートする家具工房として、天然素材と機能性に優れ、手作りの木工家具の魅力を次代につなぐべく、決意を新たにする南出社長である。

 

店舗情報

生活アート工房 生活アート工房

社名 有限会社 生活アート工房
代表 代表取締役 南出謹七
住所 小松市河田町乙-25
TEL 0761-47-8488
URL

https://s-art.co.jp/