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金澤の新しい風になろうと町家ゲストハウスかるたを起業!  町家ゲストハウスかるた

印刷ページ表示 更新日:2021年12月9日更新

町家ゲストハウスかるた

carta

室生犀星が、「美しき川は流れたり、そのほとりに我はすみぬ・・」と詠った犀川。桜橋からほど近い住宅街の細い路地を歩いていくと、風になびく白い暖簾が目に止まります。前まで歩を進めると、ローマ字で「carta」と書かれた町家ゲストハウス。遡ること3年前、県外から金沢を訪れ、金澤町家の魅力にすっかりはまった堀千予氏が、いまは女将としてこのゲストハウスを切り盛りしています。堀氏の心を鷲掴みにした金澤町家の魅力とは何なのでしょうか。

 

金澤町家に一目惚れし、ゲストハウスを起業

新潟県の越後湯沢で暮らしていた堀氏夫妻。ホテルのフロントと予約課で働いていた堀氏は、2019年の夏、ご主人と共に、金沢市有松に残るご主人の祖父の家を見に来ることになりました。それが、堀氏と金澤町家の出逢いでした。それまで全く金澤町家の存在を知らなかった堀氏は、金澤町家に一目惚れ。ホテルで働いていたこともあり、この建物を活用して宿が出来たら、訪日旅行者に喜んでもらえるのではないかと閃きましたが、残念ながら、その建物は諸事情があって改装するのが難しいことが分かります。諦めかけていたところ、設計士から現在の幸町の物件の紹介がありました。早速見に行くと、30年あまり空き家になっていた物件だけに老朽化が進行して傷んでいましたが、奥までずっと続く20メートル以上ある土間と8メートルを超える高い吹き抜けの天井に圧倒されます。中に入ってみると、それぞれに個性のある部屋が、ほどよい距離感で配置されていて、宿として4組受け入れられる造りでした。「これなら改装すれば素敵に生まれ変わるに違いないと直感し、ゲストハウスにリニューアルすることを決断しました。」と述懐します。


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コロナ禍でもチャレンジあるのみ!

いざ改装工事が始まると、さらにあちこち傷んでいるところが見つかり、想定していた以上に費用が嵩むことに。自己資金と創業支援融資、金澤町家に対する補助金などを活用しながら2020年8月に工事がスタートし、2021年3月に完成。思い立ってから工事が始まるまで時間がかかったのは、補助金を申請してから認可されるまでに時間を要したためでした。工事をスタートした時点では、既に新型コロナウイルス感染症が世界に拡大し、飲食業や宿泊業が大変厳しい環境に晒されていただけに、計画を断念、あるいは延期することは考えなかったのだろうかと伺うと、「正直コロナは年内に収まるだろうと思っていて、年をまたいでこんなに長引くとは思ってもみませんでした。それでも途中で止めることは頭になく、予定通りオープンすることだけ考えていました。」となかなか前向きです。2021年4月にオープンすれば、その直後にゴールデンウィークがあり、一定の予約をいただけるだろうとの胸算用でしたが・・・。

 

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個性ある4部屋から成るゲストハウス

年代物のシンガーミシンが残っていた部屋は、大正浪漫風の部屋「オモテの間  SINGER」に。二階の座敷には埋もれ木の柱が使われていたことから、「ザシキの間 埋もれ木」に。二階奥の離れの部屋は、二代目家主がかるた名人で、金沢かるた協会の設立メンバーの一人だったことが分かり、かるたの腕を磨いた部屋に因み「ハナレの間 かるた」に。一階の道路に面した部屋は、かつて金箔職人だった初代家主が商談に使っていたスペースを改装し、「ミセの間 箔商」と命名。何よりもこの建物の魅力は、奥にある庭。当初は荒れ放題で、置かれている灯籠も伸び放題の草木に埋もれていて見えなかったそうです。伸び放題の木々を剪定し、雑草を取り除くと、苔が見事な趣ある庭が蘇りました。天気のいい日は、何とも心地よい風が庭から玄関に抜けていきます。改修工事が終わり、いよいよゲストハウスの名前をどうするかとなった時、かつて住んでいた家主が石川県かるた協会の設立メンバーであるかるた名人で、かるたにゆかりのある家ということと、読み札と取り札の2枚1組で競技が進むかるたのルールが、ゲストのニーズとスタッフの接客がフィットして運営されていくゲストハウスのイメージと重なり、「町家ゲストハウスかるた」に決まりました。このかるたのローマ字が染め抜かれた白い暖簾が、風になびいて来客を迎えてくれます。

     

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厳しかったオープンからの半年

厳しかったオープンからの半年

歴史ある金澤町家の趣や造りといった日本の昔ながらの風情・情緒を、訪日旅行者に満喫してもらうことを目的に、内部も可能な限り当時の素材や間取りを活かし、満を持してオープンしたゲストハウス。2021年4月21日にオープンし、最初の宿泊客は、東京の美術大学に在学しているシンガポール人の男子学生でした。金沢の宿がどこも一杯で、Booking.comであちこち検索して、かるたに辿り着いたそうです。ところが、ほどなくして、関東地方への度重なる緊急事態宣言、石川県にはまん延防止等重点措置が適用され、5月、6月、かき入れ時の夏休み期間も、兼六園が閉園したのをはじめ、県有施設が軒並み長期休館したことから、海外からは勿論のこと県外からの旅行者も急減し、宿泊客ゼロで閑古鳥が鳴く日が多かったようです。それでも8月に入ると、大学のサークルが貸切で連泊してくれるようになり、「キャンセルも多かったですが、平均すると何とかやりくりできた月でした。」と笑顔に。

 

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厳しい状況を乗り切るためレンタルスペースを開始

コロナ禍が続いている現状で、このまま指をくわえている訳にはいかないと危機感を抱いた堀氏は、レンタルスペースとして建物を使ってもらうことを思い立ちました。早速レンタルスペースを紹介するサイトに登録してみると、間もなく問い合わせが入るようになり、アロマ体験、ヨガ教室、浴衣撮影会、結婚式の前撮りなど、多様な用途で使われるようになります。1部屋1時間1,000円、1棟まるごと1時間3,000円にてレンタル中。10月からは、石川県民割りがスタートしたのに合わせ、『五感にごちそうキャンペーン宿泊プラン』と銘打ち、県内在住者向けに、提携した料理店でのコース料理(アルコールを含むお飲み物付)の夕食+宿泊で一人5,000円、別途2,000円の石川県観光クーポンが付く宿泊プランをはじめ、金箔フェイシャルエステ付き宿泊プラン(同額・同クーポン)、人力車乗車体験付き宿泊プラン(同額・同クーポン)の3つのプランを打ち出し、誘客に努めています。いずれも実質3,000円で楽しめるとあって、これからの利用増に期待です。1日最大14名まで宿泊できるため、職場のグループ、親戚や友人家族で貸切るのも楽しい利用法になりそうですね。

 

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アフターコロナの時代を見据え

2019年に金沢を訪れた時は、新幹線効果もあり、インバウンドの外国人や県外からの観光客で金沢の街は賑わっていました。今は街の賑わいもどこかに行ってしまった感さえあります。「私自身が金沢の人間ではないため、つながりもなく、知り合いもいませんでしたが、オープンしてから少しずつですが、いろんなご縁が広がり、協力して下さる知人も増え、あとはコロナさえなければというのが偽らざる気持ちです。」と肩を落としていました。それでも、リピーターの大学生の友人の輪がきっかけとなり、少しずつではあるが、存在が知られ始めてきていることは、厳しい中でも明るい兆しです。3日に1回ぐらいのペースで自らインスタグラムで情報発信も行っています。宿泊客が発信したのを見て予約が入ることもあります。Booking.comからの予約が最も多く、そこからかるたのホームページにアクセスし、宿の中はどうなっているか、写真を見て確かめて安心してから予約するケースが多いとのことです。2021年は2年ぶりに金沢マラソンが開催され、参加者の予約もあったといいます。コロナ禍の厳しく長いトンネルもようやく遠くに出口の明かりが見え始めてきたようでもあり、町家ゲストハウスかるたを商いとして成功させる夢の実現に向け、まっしぐらに邁進していただき、堀氏だからこそ気付く、金沢の奥深い魅力を発信する町家ゲストハウスかるたにエールを贈りたいと思います。
 

店舗情報


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    堀 千予氏

店名 町家ゲストハウスかるた
代表 堀 千予
住所 金沢市幸町10-22
電話 050-3592-8878
URL https://machiya-carta.com/