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伝統の蒔絵技法と焼付塗装技術を融合し、金属パネルの蒔絵ウォールを開発!  有限会社メタル・コート

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有限会社メタル・コート

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自動車塗装工兼漆職人、太田隆氏

昭和42年から金沢市米泉町で、自動車塗装業を営んでいた兄を手伝って焼付塗装技術を身につけた太田隆氏は、地元の伝統工芸である漆塗りや蒔絵に興味を持つようになり、昭和52年頃から金沢市内三馬にあった蒔絵教室に通い始めました。そこには埼玉在住の漆芸家・遊部文吾氏が指導に来ており、やがて太田氏は遊部先生に師事し、本格的に蒔絵を習い始めました。次第に金沢で活躍する蒔絵や沈金の作家たちとの人脈の輪が広がり、のちに野村大仙氏に師事し、金沢の工芸界の作り手の一人として知られるまでになります。太田氏は26歳で独立し、現在の野々市市二日市において、建築金物を焼付塗装する有限会社メタル・コートを設立。塗装の仕事をする傍ら、あくまでも趣味の域ではありますが、人工的に作られた焼付塗料と天然漆、この相反する塗料の奥深さ、魅力、性質を熟知する稀有な存在として知られるようになりました。


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「ゆらぎの茶室」制作に参画

ドイツ・ベルリンにある欧州最大級の文化施設「フンボルトフォーラム」に、ベルリン国立アジア美術館が移設されるにあたり、日本文化展示コーナーに設置される茶室の国際コンペティションが2018年夏に行われました。その際、以前ベルリンの壁前で開催された献茶式に参加した、裏千家今日庵業躰の奈良宗久氏と浦建築研究所が「ゆらぎの茶室」の構想案を出品し、最優秀賞に選ばれました。この茶室は、金沢の新しいまちづくりの方向性を模索する有志の集まり「金沢まち・ひと会議」の議論の中から生まれた、建築を一つの工芸として捉えた「工芸建築」の一案。テーマは「破壊と創造」で、第二次世界大戦で破壊されたままの状態で保存されているカイザー・ヴィルヘルム記念教会を模した八角形で、一期一会の精神で過ごす茶室を組み合わせ、平和を表現したものです。「ゆらぎの茶室」の現物を制作するにあたり、全国各地の有名な茶室を手掛けた業者に制作の打診を行いますが、金属のパネルに漆を吹き付ける技術を有するところがありませんでした。そこで、監修する奈良宗久氏が、漆工作家の三代・西村松逸氏に相談し、漆と塗装の双方を熟知するメタル・コートの太田隆氏に白羽の矢が立ったのです。

 

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試行錯誤、失敗を繰り返し、漆と金属を融合

ゆらぎの茶室の仕事は、西村松逸氏が仕事を請けたものの、あちこち探し回っても最大で4メートル×2メートルあまりの金属パネルに漆を吹き付けることができる業者が、輪島塗の産地でも山中漆器の産地でも見つからず、やむなくメタル・コートの太田氏に話が舞い込んできました。趣味として蒔絵や漆塗りに親しんではいましたが、金属に漆を塗る手法を見出すため、県工業試験場の協力を得て、鉄、アルミ、ステンレスに塗り、研究を重ねました。何よりも漆はとてもデリケートな塗料で、埃が舞っている塗装工場の外と変わらない現場で吹き付けてみると、案の定漆がきれいに定着せず、ムラだらけになりやり直しの連続でした。理想はクリーンルームの中で作業することですが、現実には無理なため、工場内にこの金属パネルを塗装するための仕切った空間を新たに設けました。文字通り息を潜め、埃が舞い上がらないよう完全防備のスタイルにて、外からの風も可能な限り塞ぎ、細心の注意を払って作業する日々が続きます。金属のパネルに直接漆を吹き付けても、うまく付かない上に、簡単に剥落してしまうことから、金属パネルに黒ペンキで吹き付け塗装した上から、漆を密着させるために、接着剤の役割を果たすポリカーボネート樹脂を薄く層になるようにパネルに塗り、その上から漆を薄く吹き付けるという手法を導き出します。何度も失敗を繰り返しながら、試行錯誤を重ね、天井、床、壁面などに使う金属パネル8枚あまりを吹き付け塗装し、最後に180度の高温で焼き付けて仕上げとなります。通常の焼付塗装であれば160度前後で乾きますが、漆の場合は低い温度では表面が乾いていても中が乾かないため、乾燥工程も手間がかかります。もちろん漆の層が厚ければ焼き付け時に割れが発生しますが、そうならない最適の塗装の厚さ加減も太田氏が、塗装と漆の両方を習得していた職人ならこそ実現できたと言っても過言ではありません。

 

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コロナ禍がさらなる展開を阻む

こうした新たな分野への挑戦が形となって結実したものの、折あしくコロナ禍が続く環境下のため、PRする場も機会もなく、黙々と日々建築金物の塗装に専念せざるを得ない状況にあります。と同時に、漆や蒔絵を施すとなれば、当然のことながら制作コストが格段に高くなることから、富裕層の住宅、旅館やホテルの壁面や柱、公共施設の装飾といった特殊な世界に限られます。その観点で、現時点ではほとんど宣伝も情報発信も行っていません。コロナ禍にならなければ、ベルリンに世界の首脳を招いてお披露目の場が予定されており、太田氏も招待されていたものの、コロナ禍で全てキャンセルとなった残念な経緯があります。そのため、コロナ禍が終息した暁には、建築設計事務所や著名なデザイナーに向けて、自社の新たな商品としてPRしていくことを検討しています。

 

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ホームページを開設し、自社の技術力を発信

PRを行う前段階として、長男の智士氏が日々の仕事の合間を縫って、自社のホームページを制作中しており、間もなく日の目を見る予定です。伝統工芸である蒔絵と現代の吹き付け塗装の技術が見事に融合し、新たに生まれた蒔絵ウォールではありますが、コロナ禍のため世間の人たちに広く知ってもらう機会がなくなったことから、自社ホームページにて情報発信し、新たな事業の柱に育てていく契機にしたい考えです。本業の鉄・ステンレス・アルミといった建築関連の金属塗装の仕事はコロナ禍どこ吹く風の忙しさであり、とりわけ特殊な塗装の仕事が多く発注されていることからも、同社の技術力の高さが伺えます。「この蒔絵ウォールを、人が集まる公共施設やホテル、旅館など、いろんな建物において、目立つアクセントになる建築分野の目玉商品に育てていけるよう、さらに技術力に磨きをかけていきたい。」と決意を新たにする太田氏父子のさらなる活躍に期待です。

 

会社概要


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 太田 隆氏  智士氏

商号 有限会社メタル・コート
代表者 代表取締役 太田 隆
住所 野々市市二日市1-55-1
電話 076ー246ー6407