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地域密着の商いに、兄弟の感性とセンスをプラスし、互いの個性と人脈を活かした花ビジネスが開花! (有)いなば生花店

印刷ページ表示 更新日:2023年2月10日更新

有限会社いなば生花店

地域密着の商いに、兄弟の感性とセンスをプラスし、互いの個性と人脈を活かした花ビジネスが開花! (有)いなば生花店

人の一生には数多の節目や記念日がある。人生の始まりである誕生日にはじまり、入学、卒業、就職、昇進、結婚、新築、出産、退職、そして人生最期の葬儀まで、さまざまな節目、記念日に文字通り花を添える季節の生花は、人の営みにとって欠かせないパートナーではないだろうか。金沢市金石地区で昭和22年の創業以来、近隣の寺院や町民の人たちに親しまれる(有)いなば生花店の代表取締役で三代目の稲葉淳さんにお話を伺った。

 

いなば生花店の三代目

子供のころから花屋の商売を見ながら育ったため、漠然とではあったが後を継ぐ思いだった淳さん。大学を卒業すると、東京大崎にあるJFTD学園日本フラワーカレッジに入り、1年間、生花にまつわるさまざまなことを学ぶと同時に生け花教室にも通い基礎的な知識を身に付け、家業に入る。遡ること10年前に代表に就くと同時に、分散していた倉庫兼作業場を店舗裏手に新築し、業務の効率化を図る。

店舗のある金石地区には寺院が二十数軒あり、日々の仏事に飾る花、お盆・お彼岸のお墓に供えるお花など、コンスタントな需要がある。また、金石は漁師町で信心深い人が多く、毎日仏壇に花を飾ってお参りする習慣や月命日に決まって先祖の墓参りに行くなど、ベースとなる安定した売上がある。

いなば生花店の店内 いなば生花店の様子 

 

兄弟それぞれの得意分野を活かす

淳さんの弟の達さんは、大学卒業後、保育士や介護士としてしばらく働いたのち、いなば生花店に入社。兄弟の年齢差が9歳あることから、友人関係や仕事のつながりも異なり、新規の顧客やビジネスの輪が広がっている。その意味で、顧客世代を弟のつながりの世代に意図的にシフトさせていくように努めている。そんな思いもあり、ミモザの商品やドライフラワーの商品にも力を入れている。「例えば50代以上の特に男性にとっては、枯れたドライフラワーの何がいいのか?という人が多いと思うが、若い世代は美しい黄色のミモザをわざわざドライにしてこげ茶色になったのを見てかわいいと言うわけです。その気持ちは我々には分からないが、それを否定せずに受け入れることが、新たなビジネスにつながるのです。」と苦笑しながら語る。弟の達さんは、2020年世界らん展フラワーデザイン部門で最優秀賞を受賞するほどの秀でたセンスの持ち主。受賞がきっかけで、地元企業とのコラボレーションが実現するなど、兄弟が互いにない部分を補完し合い、実にうまくビジネスが展開している。

 胡蝶蘭 飾られたお花 2020年世界らん展フラワーデザイン部門で最優秀賞を受賞

 

お祝い=胡蝶蘭

県庁舎が駅西に移転後、本社や事務所を駅西地区に新築または移転する企業が増えたが、北陸新幹線が開業し、加速度的にそうした動きが活発化してきている。新社屋落成、本社移転、社長交代等々のビジネスのお祝いに何を贈るかとなると、見栄えが良く3~5万円サイズの胡蝶蘭が絶大なる人気商品。そうした底堅い需要が駅西地区にあることから、エアコンで温度管理を徹底した胡蝶蘭専用の保管スペースが効果を発揮する。確かに3万円程度で、お祝いに贈って見栄えがし、もらった側も納得するのは胡蝶蘭しかないのも事実。インスタグラムなどのSNSに胡蝶蘭の写真をアップしておくと、同業者から分けてほしいとの依頼も入る。生産者から市場への入荷には波があるため、商品が余剰の時にまとめて仕入れることで仕入れ値を抑え、保管する間に傷むリスクを取りつつ、急な注文にも即応できる体制を整えている。

胡蝶蘭がたくさん並んでいる 白い胡蝶蘭 

 

バックヤードの冷蔵・空調倉庫が武器

冠婚葬祭で大量の生花を必要とすることから、相場が安い時に多めに仕入れ、3坪から6坪の大型冷蔵庫で保管しておき、必要な時に随時出している。大型冷蔵庫も風が出るタイプと出ないタイプを完備し、花の品種によって使い分ける配慮までなされている。葬儀の祭壇は昔から手掛けてきているが、近年はコロナ禍で大規模な葬儀が減少し、なおかつ、参列者が焼香を済ませたらそのまま帰るスタイルが主流になり、従来の祭壇横に社名や名前入りのかご花を飾るニーズが激減している。また、小規模や家族葬が主流となったため、大掛かりな白い菊を大量に使った祭壇から、洋花のアレンジを美しく並べる形に変わってきている。そのため、従来まで祭壇を飾っていた白い菊の使用量は激減したものの、洋花の使用量はそれほど減っていないとのこと。「あまり一つの柱に集中するのではなく、広くいろんなニーズにこたえられる姿勢が商いのポイントだと痛感しています。」とコロナ禍を総括。

バックヤードの冷蔵・空調倉庫 バックヤードの冷蔵・空調倉庫 

 

フルーツの取り扱いも始める

市場のつながりの中で、花の生産者で果物を作っている農家もある。そんな農家から、少量で青果の流通に載らない分を生花の流通に載せて分けてもらい、得意客に新鮮な果物を安価に販売することを新規事業としてスタートさせた。そのための冷蔵庫を県の補助金を活用して導入し、年間を通して数種類の果物を冷蔵保管している。いちごやマンゴー、シャインマスカットは人気商品で、コンスタントに需要がある。とはいえ、あくまでも薄利で鮮度のいいフルーツをお得意先にお裾分けする思いで、隙間ビジネス的に取り組んでいる。

シャインマスカット いちご もも マンゴー

 

花屋の商いもSNSが大切な時代に

顧客層はこれまで年配層が主だったが、近年は兄弟が発信するインスタグラムなどのSNSを見て、若い女性客が来店するようになり、目に見えた効果も出ている。若い世代はいろんなところから情報収集しているため、花屋の商いでも無料で発信できるSNSの活用は必須と力説する。その証左に、市内のホテルを会場に、ミモザとユーカリのワークショップをすることをSNSで発信した途端に20名の女性が集まったという。また、従来の大きな門松づくりは重労働だが、小さくて家の中に飾れるものができないかとの声を受け、公民館でミニ門松づくりを始めたことがSNSで広がり、ホテルでのワークショップ開催や金沢市内のある町会では約120セット分のワークショップが開かれるまでに人気の輪が広がってきている。

ミモザとユーカリのワークショップ ミモザとユーカリ ​

 

ありがたい花屋の商いに感謝

人生の始まりである誕生日にはじまり、入園、卒園、入学、卒業、就職、昇進、お墓参り、結婚、出産、定年退職、葬儀等々、人生における様々な場面で花は欠かせない。それだけでなく、毎月いろんな行事が行われる際にも、何らかの形で花が飾られるケースが多々ある。稲葉さん曰く「サザエさんの漫画でも八百屋さんや酒屋さんは勝手口から入る商いなのに対し、花屋は正面から入れるありがたい仕事で、花を貰って嫌な気分になる人はいない。そういう商売ができることに感謝しています。」と。何もない無機質な部屋の中に生花があるだけで、気分も違ってくるのは誰もが納得するところ。その思いを常に持ちつつ、花の店頭販売はもちろんのこと、いかにして「いなば生花店」の名前を多くの人に知ってもらうか、兄弟がいろんなワークショップをはじめとした取り組みをやっていることを知ってもらうため、毎日SNSで発信していくことが兄弟にとっての重要な仕事。兄弟の感性、デザインセンス、人脈を最大限活用し、異業種から新たな仕事の依頼がくるような花屋ビジネスを展開すべく、兄弟を中心に家族、従業員が結束して邁進するいなば生花店の益々の繁栄を願わずにはいられない。 

いなば生花店の外観 稲葉 淳さん
​                       稲葉 淳さん

 

会社概要

店名 有限会社いなば生花店
代表 代表取締役 稲葉 淳
住所 金沢市金石西1-6-16
電話 076-268-4187
URL http://facebook.com/inaba.jun