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山中漆器に息づく職人技とストーリーを五感で体感できる工房見学ツアーで魅力再発見! CRAFTOUR

印刷ページ表示 更新日:2023年12月26日更新

  

 CRAFTOUR

山中漆器に息づく職人技とストーリーを五感で体感できる工房見学ツアーで魅力再発見! CRAFTOUR

加賀市山中温泉と言えば、石川県を代表する伝統的工芸品である山中漆器の産地。昔ながらの木製漆器だけでなく、贈答やギフト向けの樹脂製の漆器まで、バリエーション豊富な商品を世に送り出している。とはいえ、山中漆器がどのように作り出されているか、詳細に知っている人は意外に少ない。そこに着眼し、山中温泉を訪れた観光客に職人の仕事場を案内する工房見学ツアーを運営するCRAFTOUR代表の篠崎健治氏にお話を伺った。

 

篠崎健治さんプロフィール

神奈川県横浜市で生まれ育ち、大学を卒業して日本政策金融公庫に入庫。同庫の農林水産事業に配属され、個人農家や食品製造会社への営業や、審査や回収の仕事に従事。秋田支店に4年勤務したのち、福井支店に異動になった2年目に、総務省の「地域おこし協力隊」制度を活用した加賀市の起業家プログラム「Next Commons Lab加賀」がスタートすることになり、そのプロジェクトの事務局スタッフの募集が目に止まる。「その時は、新規営農者の創業支援を公庫で担当していて、北陸での生活が自分にすごくマッチしていたことから、思い切って手を挙げ、採用されたことを機に公庫を退職して加賀市へ移住しました。」と篠崎さんは経緯を語る。Next Commons Labは地域おこし協力隊の制度を活用していることから、篠崎さんも同協力隊の肩書も持ちながら3年間加賀市で活動する(このプログラムは、加賀市に地域おこし協力隊を10人程度受け入れ、夫々が地元のプレーヤーと協業し、地元資源を活かした起業をすることが条件で、4年目以降に独立することを目指す)。その背景には、地域おこし協力隊としてやってきた人たちが、なかなか地元に根付かないという課題があり、篠崎さんは事務局の立場と並行して起業家の伴走支援にも奔走する。

   

 

山中の町が好き、何か役に立ちたいとの思いが起業の原点

そんな中で、山中温泉にたまたま移住した篠崎さんは、山中漆器の事業者とのつながりもできつつあった。そんなタイミングで工場や職人の仕事場を見て回るオープンファクトリーのイベント「around」というイベントが山中温泉で開催される。その手伝いをしたことで、山中漆器の職人との縁が生まれる。そのイベントは10月の3日間行われ盛況裡に終わるも、その翌年からコロナ禍になり、イベントができなくなる。そのイベントの実行委員長を務めた我戸幹男商店の我戸社長はじめ職人たちも、このイベントがとても良かったと好評だったことから、山中温泉は通年で来街者がいるところで、ただ温泉に泊って帰るだけでなく、職人の工房を見学して回れるサービスがあるといいという話となった。そこで、もしかしたらここでなら自分も役に立てるかもしれないと思い立ち、CRAFTOURを立ち上げることに。コロナ禍の期間は、集客に苦戦してきたことから、地元の事業者のバックオフィスのサポートや事業計画書の策定など伴走支援的なサポートを行いながら、同時並行で予約が入るとツアーを実施してきた。

   

 

コロナ禍ではあったが、延べ100名以上を案内

コロナ禍ではあったものの、多い時では週1回程度ツアーの申し込みがあった。篠崎さんは、当初、山中温泉の宿泊目的の観光客が旅館に紹介されて、あるいは周辺情報をネットで検索し、宿泊した翌日のアクティビティーの一つとしてCRAFTOURに申し込むケースを想定していたが、スタートしてみると、ネットでCRAFTOURを見つけ、興味を持って調べてみると山中には温泉もあるから宿泊しようとなった利用者の割合が意外と多いとのこと。参加者は年配者だけでなく、モノづくりに興味のある若い女性、コロナ禍が明けてからは、旅行代理店から紹介されたインバウンドの海外からの旅行者が増えてきているという。スタートから3年、その大部分はコロナ禍であったため、想定していた利用者には程遠いものの、それでも延べ100名以上案内しているとのこと。

職人の工房を見学して回る 山中漆器の職人

 

工房ツアーは3コース

『木地挽きコース』は、熟練された職人が手掛ける「薄挽き」や、木の成長に合わせた「縦木取り」の職人技を間近に見ることができる。『漆塗り・蒔絵』コースは、木目をあえて見せる「拭き漆」、繊細な技巧「蒔絵」の職人技を見ることができ、適度な湿度と温度に保つ「漆風呂」も見学ができる。『成形・塗装コース』は、合理性と耐久性を備えた「デザイン」、手作業で行なわれている「吹き付け」、ダイナミックな「生産現場」を見学する。一般的には普段の仕事場を見せてもらうのは難しいが、きっかけとなったaroundで親しくなった山中漆器の組合のメンバー等々の協力で、一部の職人がツアーの受け入れに協力してくれ、作業現場の工房見学が実現する。山中漆器と言えば木地挽きだけに、木地挽きコースの人気が高いかと思いきや、漆塗り・蒔絵コースも予約は多い。中には3コース全てを希望するお客さんも。1コース約2時間のプログラムで、税込み9900円から。2コースまたは3コースのミックスも可能。プライベートツアーのため顧客に合わせてアレンジをしている。海外客の場合は通訳の料金が別途必要。

   

 

工房見学を通して顧客・職人双方に新たな気づき

店頭に並んでいる山中漆器がどのように作られているのか、それを作業現場で自らの目で確認することで、1つのお椀ができるまでに何人もの職人の手がかかっていることを知り、商品の見えない部分の価値が分かることで、価格に対する理解度が高まることがお客さん側の気づき。職人側からすると、普段は問屋からの注文に応じて作るのが仕事の流れで、お客さんと直接会うことはあまりない。それだけにお客さんが仕事場を訪れることはとても新鮮で、使う側がどんなところに目を向けているか生の声を聞くことができ、新たな発見や気づきにつながっていて、双方にメリットが生まれている。「目論見どおりの効果が見え始めてきており、嬉しい限りです。なかでも海外からのお客様は、ツアーが終わると納得された様子で商品を購入されるケースが増えています。」と篠崎さんは顔を綻ばす。近年は全国各地の伝統工芸の生産現場がオープンファクトリー化しており、いわゆる工場見学がトレンドになりつつあるが、山中漆器の場合は、何人もの職人を経由して一つのモノが出来上がるので、完成までにどんどん形が変わっていく様子を職人の工房を巡りながら体感できるのが付加価値になっていて、このツアーは山中漆器の産地ならではの商品と言える。一般の方は、樹脂の山中漆器は、自動化された工場で大量生産されているようなイメージを抱いているが、実は意外と手作業の部分も多く、一つ一つ職人がスプレーで塗装している場面に目を丸くする姿や、大手量販店などで販売されているお弁当箱が山中温泉で作られている事実を知って驚くとのこと。

山中漆器 山中漆器のお椀  

 

山中温泉、山中漆器の魅力発信に腐心

篠崎さんは、銀行マン時代に福井県で勤務していたことから、人的つながりのある福井のイベントに出店して自らの取り組みをPRする活動など、少しずつではあるがCRAFTOURを浸透させる取り組みにも余念がない。最近では、自社のツアー企画の経験を活かして他県のツアーのアドバイザリーなどで、篠崎さんのノウハウを発揮できる場に広がりが出てきている。当面は、インバウンド客向けのツアーの充実や集客に資するマーケティングの強化に力を入れ、山中温泉の様々な情報をホームページにアップしながら魅力発信に努める考えだ。北陸新幹線が敦賀まで延伸した折には、現在一時的に休業している実店舗も再オープンさせ、街歩きをしている来街者に向けて山中漆器の販売ならびにCRAFTOURへの参加を促す方向へシフトしていきたい考えだ。将来的には、これから職人を目指す方々に、ベテラン職人の工房見学の案内を仕事として提案することも検討している。山中温泉ならびに山中漆器の魅力を外から来た篠崎さんの新しい角度の視点から見つめ直し、新たな山中の魅力を全国に、そして海外へ発信する拠点となるべく邁進してもらいたい。

篠崎 健治さん
​   篠崎 健治さん

 

会社概要

商号 CRAFTOUR
設立 令和2年3月
代表者 篠崎 健治
住所 加賀市山中温泉東町1丁目-マ21
電話 0761-75-7394
URL https://www.craftour.jp/