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地域の人に愛され、親しまれ、人々が集う芝居小屋であり、お茶の間になるべく邁進中! 金沢おぐら座(株)

印刷ページ表示 更新日:2024年2月29日更新

  

 金沢おぐら座株式会社

地域の人に愛され、親しまれ、人々が集う芝居小屋であり、お茶の間になるべく邁進中! 金沢おぐら座(株)

人の一生には数多の出来事が起こる。楽しいこともあれば、苦しいこともあり、令和6年能登半島地震のように悲しく恐ろしい出来事も。そうした現実の厳しさをしばし忘れさせてくれ、笑いや涙する感動を与えてくれる、そんな素晴らしい職業が役者ではないだろうか。昭和の時代に、あの梅沢富美男がステージに立った金沢ヘルスセンターが懐かしく思い出される。令和の今、そんな生のステージを鑑賞できる常設の芝居小屋が森本駅前にある。「金沢おぐら座」を運営する金沢おぐら座株式会社の鷹箸直樹社長にお話を伺った。

 

芝居小屋を運営するに至るまで

群馬県で生まれ育った鷹箸さんは、県外の大学に進学したものの、子どもの頃から習ってきた剣道の試合で、対峙する時のエネルギーのぶつかり合いのような、熱いエネルギーを授業で感じられず、バンド活動に明け暮れ中退。知人を頼って来沢し、求人雑誌で仕事を探していると、ドラマー募集の広告が目に止まる。生演奏をやっているバーの求人で、ドラムは叩いたこともなかったが応募し、なぜか採用される。それから毎日、お客さんにお酒を作り、演奏し、接客する日々を22歳から8年間続ける。バンドの演奏が終わると、その日たまたま一緒になったお客さん同士が意気投合し仲良くなる姿を目の当たりにし、同じものを見て、拍手し、演奏を聴いて感動を共有することで、人は仲良くなれることを実感する。自分も何かできないかと思い始めていた時に、日本舞踊の先生である孝藤まりこさんから、稽古場を芝居小屋として運営する手伝いを請われ、芝居には興味がなかったものの、手伝いに行くことに。雑用やもぎりをしながら舞台を見て、こんな面白い世界があるんだと感動する。ところが、1年余りで採算が合わず芝居小屋を閉めることに。その際、孝藤さんから「社長になって芝居小屋をやったら」と背中を押される。

金沢おぐら座 金沢おぐら座の外観

 

金沢おぐら座の誕生

渡りに船とはこのことで、自分で発信したいと思い始めていた鷹箸さんにチャンスが舞い込む。早速、芝居小屋として使えそうな物件をあちこち探した中に、森本駅の真ん前でかつてスーパーだった物件が空いていた。わずか1年あまり芝居小屋を手伝ったことで、鷹箸さんの人生が大きく動く。とはいえ、開業資金がなかったため、ビルのオーナーから「森本商工会を通して融資を受けることができたら貸してもいいよ。」と言われる。オーナーとしては断る口実だったようだが、いざ商工会に融資を申し込んでみると、満額OKが出たため、めでたく新たな1歩を踏み出すことになったのが2009年のこと。

公演のポスター    

 

劇団と劇場の関係

劇団と一口に言っても、ほんの数人で裏方兼役者をこなす家族的な劇団が大部分で、全国的に有名な劇団でも10人までいない。トラックに舞台装置や音響を積み、1か月ずつ全国各地の芝居小屋を廻って生計を立てている。1本の演目だけの劇団は、スーパー銭湯などで2日~3日公演して移動するのに対し、1か月間公演できる劇団は、毎日演目を替えて公演でき、中には午前と午後でも演目を替える劇団もある。毎日、違う芝居と舞踊ショーができる劇団でないと劇場公演は難しく、このレベルの劇団は全国に50前後とのこと。家族単位の小劇団を含めると300あまりある。劇場と劇団の間を取り持つのが興行師で、有力な興行師が全国に5人ほどいて、金沢おぐら座もその中の一人と契約して劇団を呼んでいる。劇場は月間の入場料収入から、ポスター代などの必要経費を引いて、劇団と折半する形のため、劇場公演は売上が増えるほど劇団の身入りが増えることから、劇団はすごく頑張るそうだ。

   

 

コロナ禍を乗り越えたら能登半島地震

2009年から2020年のコロナ禍前までは、ほぼ順調に推移していたものの、コロナ禍になって当然のことながら入場者が激減し、緊急事態宣言下の15日間は休業を余儀なくされる。その期間以外は、座席数を大幅に減らして毎日公演をやり続け、補助金も活用し、金融機関からの借り入れもしながら、例え入場者が数人でも公演をやり続けてきた。さらに、劇場まで足を運ぶことが難しいお客さんのために、ライブ配信にも取り組む。ようやくの思いでコロナ禍から抜け出したところで、令和6年能登半島地震が発生し、劇場内は大丈夫だったが、ビル内の天井が一部落下し、ガラスが割れる被害が出たものの、公演は休まず続けてきている。コロナ禍前は、1か月公演で3,000人あまり動員できていたのが、今は席数を減らしていることもあって2,000人入れば上々とのこと。土日になると全国から贔屓の劇団のおっかけも来場していたが、能登半島地震があってストップしている。

   

 

若い世代のお客さんを増やすことにも腐心

金沢おぐら座の客層は8割方中高年の女性であるが、少しでも客層を広げたいとの思いから、カップルデー、子供無料デー、ものまねチャリティーショー、三世代の日など、いろんな企画を考え、若い人たちに芝居の魅力を知ってもらう努力を惜しまない。「初めて見に来た子供は、芝居と舞踊ショーに真剣に見入っていて、生の芝居の感動のパワーがすごいようで、帰る時には目が輝いています。」と嬉しそうに語る。中学校の職業体験で3日間金沢おぐら座に働きに来ていた子供たちを、最終日に舞台に出したところ、お客さんからすごい拍手をもらい、それが嬉しくて役者になった子もいるという。それぐらい今の若い世代にとって、初めて芝居を見た時の心揺り動かす感動体験は並大抵ではなく、自分も劇団に入りたいと志願してくる女子高校生が後を絶たないとのこと。そうしたイベントの情報発信は、ツイッター(X)を通じて行い、常連客にはラインのお友だち登録をしてもらい、随時情報発信している。

LINEのお友だち登録

 

劇団はもちろんのこと、劇場のファンになってもらう

全国どこの劇場も、劇団のファンでお客さんが構成されているため、月替わりで劇団が替わると、次の劇団のファンがやってくるのが一般的。それに対して、金沢おぐら座は、劇場そのものにファンを作ることを当初より心掛けてきている。劇団が交替しても、毎日のように来てくれる根強いファン客が一定数いることが他の劇場にはない特徴だ。とりわけ森本地区は高齢化率が高いことから、一人暮らしのお年寄りも多く、金沢おぐら座を我が家と思って遊びに来てもらえるような雰囲気づくりを心掛けている。金沢おぐら座のスタッフは、常連客の名前をほぼ覚えていて、〇〇さんおはよう!と声掛けして親しみを感じてもらえるように努め、近所のお年寄りが自然と集う場になることが理想で、さらに芝居を見て泣き笑いしてもらえば、健康にもつながると考えている。

   

 

売店の名物は寿司桶入りのたこ焼き

数多ある劇団の中でも日本一人気なのが劇団美山で、400人前後が入る会場が毎回満席になる人気劇団。かつて金沢おぐら座で公演があった時は、大忙しだったという。その時は「休む間もなく、ずっとたこ焼ばかり焼いていた。」と述懐する。たこ焼と言えば、おぐら座の売店の名物で、特に狙ったわけではなかったが、もらった寿司桶がたくさんあったため、その中にたこ焼を入れてみたら8 個丁度入ったことから、使い捨て容器よりもSDGsだと思って使い始めたのが、今では売店の看板商品に。

たこやき 売店の名物は寿司桶入りのたこ焼き たこやき

 

地元の商店主を役者に

地元の人たちに愛され、親しまれる劇場にするために鷹箸さんが仕掛けた秘策が、森本商店街の商店主を役者として舞台に立たせること。始める時は説得するのが大変だったようだが、一度舞台に立つとその魅力に嵌り、今ではみんなやる気満々で、半年に1回公演で、今年は17回目を迎えた人気公演。時代の流れでシャッター通り化している商店街の店主さんの個性や人間力をお客さんに知ってもらいたいと始めたが、いつも大盛り上がりで、深夜の全国放送のテレビでユニークな取り組みとして紹介もされている。もちろん、全員素人なので、芝居は下手だが、その下手さが面白さにつながり、役者がうまくフォローして舞台が盛り上がるという。この時ばかりは近所の人たちが300人ぐらい見に来てくれ、金沢おぐら座を知らなかった人たちに劇場を知ってもらい、商店街のことを知らなかった人たちに商店主を知ってもらう、相乗効果で新しいつながりが生まれている。

 

 

最優秀賞受賞の栄誉が自信に

劇団を応援してくれる個人やスポンサー企業の名入れの提灯(1口2万円)がずらりと100個あまり掲げられている。当初は鷹箸さんが会社を廻って営業していたが、最近はお客さんの方から掲出依頼が来るそうだ。令和6年に開業から15年の節目を迎えるにあたり、「始めた頃はおぐら座を我が家と思ってもらえるように、お客さんとの信頼関係を構築したいと理想論を吹聴していましたが、15年やってきて、その思いでやってきてことが間違っていなかったと自信をもって言える信頼関係がお客さんとの間にしっかりできています。」と顔を綻ばす。鷹箸さんは、金沢おぐら座の取り組みを2015年に開催された第17回商工会青年部全国大会で主張発表。見事最優秀賞を獲得する。「そのことを母親に報告したらうれし泣きしてくれました。」と目を潤ませる鷹箸さん。金沢おぐら座を始めた時の情熱、多くのお客さん、役者さん、スポンサーさんとの出会いに感謝し、最優秀賞を受賞した感動を忘れず、これからも森本に活気・元気・賑わいを創出し続けてもらいたい。

鷹箸 直樹さん
​    鷹箸 直樹さん

 

会社概要

商号 金沢おぐら座株式会社
代表者 代表取締役 鷹箸 直樹
住所 金沢市弥勒町ロ68
電話 076-255-1455
URL http://oguraza.com