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白山麓の山の幸であるイノシシ肉の美味しさと魅力を全国のお客様に! (株)福岡商会

印刷ページ表示 更新日:2025年1月16日更新

  

 株式会社 福岡商会

白山麓の山の幸であるイノシシ肉の美味しさと魅力を全国のお客様に! (株)福岡商会

地球温暖化による気候変動などの複合的な要因によって、山に自生する餌となる木の実が不足し、従来までは里山で生息していたイノシシやクマが人里まで餌を求めて降りてくるようになり、全国各地で人的被害や農作物の被害が発生している。捕獲活動が行われる中、利活用されるものは少ない。山に棲む命をジビエという価値ある食材にすることで、人と動物の共存に一役買っている(株)福岡商会の福岡大平社長にお話を伺った。

 

福岡大平さんのプロフィール

長野県松本市で生まれ育った福岡さんは、愛知県の大学で地域活性化について学ぶうち、もっと専門的な知識を身に付けたいと思っていたところ、恩師の教授から能美市にある北陸先端科学技術大学院大学への進学を進められる。恩師の推薦を受け2014年に同大学院に入学し、そこで里山振興に関心をもち、里山地域で生活している農業従事者のモチベーションについて研究する。その中で最もモチベーションが下がる要因が野生鳥獣による被害であった。それを軽減するために何かできることがないか学生仲間で議論していた中から、イノシシの革を活用した商品の製造・販売をすることで地域経済に貢献するべく、在学中に仲間と起業する。そうした流れの中で、福岡さんはイノシシ肉をジビエとして提供する仕事がしたかったことから、在学中に狩猟免許を取得し、2016年に大学院を修了するタイミングで、羽咋市に獣肉処理施設が新たにできることを知り、羽咋市の地域おこし協力隊に入隊、イノシシの特産化に取り組み、解体処理技術も身に付ける。2018年から小松市の地域おこし協力隊員として、獣肉処理加工施設「ジビエアトリエ加賀の國」の立ち上げに関わる。2020年に結婚し、小松に骨を埋める覚悟を決め、現在は施設代表を務める。

ジビエアトリエ加賀の國  獣肉処理加工施設「ジビエアトリエ加賀の國」

 

ジビエアトリエ加賀の国

南加賀地域は、農林水産省がジビエの安定供給を実現する先導的モデル地区として定めた、全国で16ある「ジビエ利用モデル地区」の一つ。そのため、南加賀の小松市、加賀市、能美市、川北町の三市一町の合同施設として、2019年7月にジビエアトリエ加賀の国がオープン。この施設は、より安全なジビエの提供と消費者のジビエに対する安心の確保を図ることを目的とした制度「国産ジビエ認証」を2022年1月に取得。衛生管理基準、カットチャート(肉を切り落とすための基準となる図)による流通規格の遵守、適切なラベル表示によるトレーザビリティーの確保など、国内最高水準の衛生管理体制を整えている。捕獲現場での個体確認から、精肉やソーセージなどの二次加工品を生産する加工室までの一貫した生産体制が確立されており、消費者に高品質で安心・安全な商品を提供している。施設オープン直後に豚熱(CSF)の感染が拡大し、2年余り出荷ができない状態が続いたが、現在は年間3t前後のイノシシ肉を全国に出荷している。県内では中ノ峠物産販売所、道の駅木場潟、小松駅の観光交流センター「Komatsu九(ナイン)、小松空港売店で購入できる。毎月最終土曜日には、加賀の國で直売会も開催。地域の人たちにジビエの美味しさを知ってもらうためには、お祭りに出店するのが一番効果的で、町内会の祭りに参加できればベスト。冬の寒い時期は、豚汁の派生形で味の想像もつきやすい「しし汁」が人気とか。

     

 

石川県内の55%のシェアを占める獣肉処理施設

福岡さんは、「獲ったら食べよう、食べないなら獲らない」をモットーにしているが、現実には10頭狩猟して食べるのは1頭と1割しか利活用されておらず、それ以外は廃棄か焼却されていることを嘆く。現在では捕獲頭数が大幅に増えており、福岡さんがこの世界に入った2014年頃は利活用率が3%ぐらいで、今は10%である。2023年は350頭のイノシシを捌く。ハンターが檻で捕獲した現場まで福岡さんが出向き、電気槍で仕留めて施設まで運び、福岡さんが捌いて、従業員が肉の塊をスライスしてパック詰めし、商品ができあがる。少数精鋭体制のため、年間で捌ける頭数は限られるが、人員さえ整えば、年間1000頭に対応できる施設。ジビエアトリエ加賀の國は、石川県内のジビエ肉の55%のシェアを占めているだけに、ここがさらに元気になっていかないと石川のジビエが衰退していく恐れがあるだけに、やはり人を採用して、処理能力をアップしていくことが不可欠と捉えている。現在は豚熱対策として、イノシシのみしか扱っていないが、国の規制が緩和されていけば、イノシシやシカの肉を仕切りのあるスペースで保管することも想定している。

     

 

食育の重要性をアピール

福岡商会の理念として、生産・販売・流通・教育・継承という5つの柱を掲げている。生産はジビエアトリエ、販売は中ノ峠物産販売所を始めとしたショップ、流通は問屋を介しての全国販売と確実に歩を進めてきている。そんな中で福岡さんが今後力を入れたいのが食育と継承である。食育は子供たちにジビエに対する理解を深めてもらうために絶対に必要なことと捉えている。これまで、ジビエの食育を小学校などでしようとした時に、保護者の7割は賛成、3割が反対とはっきり分かれるため、反対する人が少しでもいると、なかなか実施できないのが現実。これは食育だけでなく学校給食の現場でも同様とのこと。動物愛護と食肉として食べることのせめぎ合いが付き物のため、場所によっては獣肉処理施設への過激な妨害事例もあるという。様々な障壁はあるものの、ジビエの美味しさ、ジビエの栄養価をできるだけ多くの人に知ってもらい、ジビエファンを広げていきたい福岡さんにとって、食育は不可欠な取り組みだけに、行政や関係機関と連携しながら、食育に取り組める日が到来することを願いたい。

ジビエ  

 

人手不足と経験豊富なハンターの減少が課題

日々のジビエの商品準備だけでなく、生産量に比例して国や県に提出する様々な書類を整える事務作業量が膨大になり、余力がないのが現状。人手と言う意味では、近年、若者の中にも狩猟免許を取得する人はいるものの、車で言うペーパードライバー的な、免許は持っているけど、狩猟は未経験というケースが多く、即戦力にならないことから、ベテランのハンターに付いて何年か修業した人が理想だが、そういう人は非常に少ないそうだ。一方で、ハンターをある程度やってきている人は、狩猟行為が好きなため食品工場である施設で働くことにギャップが生じやすくこれまた採用に至らないとのこと。石川県は、鉄砲ではなく檻で捕獲する農家兼猟師が急増し、全日本猟友会から表彰されているが、ペーパー猟師がいくら増えても、実際に現場で猟ができる人はほんの一部で、罠にかかった動物を自分で仕留められないからと呼び出されるケースがあるとのこと。町中にクマが現れた時に、麻酔銃を撃てばいいと簡単に言われるが、これは鉄砲の免許を持ち、なおかつ獣医師の免許を持っている非常に稀な人しか撃てないため、石川県内でも数名いるかいないか。しかも、動物に当たる場所で麻酔薬の必要量が変わり、麻酔銃が命中しても麻酔が効くまで30分近く暴れる例もあるため、そう簡単なことではない。

    

 

ジビエの魅力を知ってもらい、この職業の認知度を高める

福岡商会としては、ジビエだけでなく、小松トマト、国造ゆずなど南加賀のいろんな特産品とジビエを掛け合わせた、料理、レシピ、商品の詰め合わせなど、商品のバリエーションを広げて行きたい考えだが、現時点では人手がないことが、次のステップへのネックとなっている。ジビエアトリエ加賀の國のホームページでは、ネット販売のコーナーを設けていない。その理由は、ネットから小口の注文が大量に入っても、人手がないため対応できない。既存の卸の取引先への納品が最優先のため、ネット販売は今のところ考えていない。

自然の動物相手の仕事だけに、捕獲量は年によって異なり、波があることは否めないが、昔から続いている伝統的な職業であり、人間と動物の共存のためになくてはならない重要な役割を担っていることに、責任感と誇りを持っている。地球温暖化が急速に進み、自然環境が破壊されてきている今、ジビエに関わる仕事人の方たちの命がけの闘いのおかげで、鳥獣被害が最小限に抑えられていることに敬意を表したい。

福岡 大平氏 中ノ峠物産販売所
​​      福岡 大平氏             中ノ峠物産販売所

 

会社概要

商 号 株式会社 福岡商会
代 表 代表取締役 福岡大平
住 所 小松市中ノ峠町イ71番地
URL https://fukuokashokai.co.jp