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県内で唯一人の手削り昆布職人の矜持を胸に夫婦二人三脚で魅力ある商品開発に邁進! (有)大脇昆布

印刷ページ表示 更新日:2024年11月29日更新

  

 有限会社 大脇昆布

県内で唯一人の手削り昆布職人の矜持を胸に夫婦二人三脚で魅力ある商品開発に邁進! (有)大脇昆布

日本人の食事・和食の要である出汁に欠かせない昆布。北海道産の利尻昆布、日高昆布、羅臼昆布等々、収穫される産地によってその種類も味も、用途も異なる。出汁をとる昆布だけでなく、ごはんにのせたり、おむすびを包んだり、味噌汁の具材として使われるおぼろ昆布も馴染み深い。このおぼろ昆布は、職人の手削りでしか作ることができない貴重なもので、石川県内で唯一人のおぼろ昆布削り職人である大脇昆布の大脇一登社長にお話を伺った。

 

能登半島地震の被害は最小限

大脇昆布の店舗は、能登町宇出津山分地区にあり、令和6年1月1日に発生した能登半島地震で大きな被害を受けたが、幸いにも大脇昆布の店舗が建っている地盤が粘土質だったことが幸いしたのか、近隣の家々ほど建物に大きな被害を受けずに済む。もちろん4月末まで断水が続いたため、水汲み作業に時間を取られて生産効率は落ちたものの、3月頃までは多くの復興支援購入のおかげで忙しい日々を送る。店舗の近くに、震災の復旧作業にあたるボランティアの人たちがキャンプを設営していて、ボランティアの人たちが地元に帰る際、生ものでなく乾物であるおぼろ昆布の商品が復興支援の一助にもなるお土産として重宝し、多くの人たちが購入している。さらに、震災復興支援でネット通販にも注文が多く入り、近くの道の駅にあるイカキングを見に来た観光客が立ち寄るなど、地震の影響で商売が滞ることはなく、幸いにも売上が伸びている。余談ではあるが、高台に避難してきた人たちに自社の汲み取り式トイレを開放し、多くの女性が列をついたという。

     

 

子どもの頃から後を継ぐ思いで育つ

先代が、昭和30年頃から福井県敦賀市にあった昆布問屋に丁稚奉公に行き20年あまりの修業を積み、敦賀市内で自らの昆布店を持ったのち、親の面倒をみるため故郷である能登町の実家(現在地)に戻り、昭和53年に大脇昆布を開業する。その頃は、昆布削り職人が8人あまりいたそうで、父親や職人たちの仕事を日々見ながら育った大脇社長は、子供心に将来は後を継ぐ思いを抱く。入社すると、全国各地の百貨店で開催される催事「石川県の観光と物産展」に参加し、ピーク時は5人の社員と巡回し、1年の3分の2は帰れない生活を送っていたが、売上の低迷、職人の高齢化、取引先の問屋の倒産などがあり、13年余り前に止む無く催事への参加をとりやめる。

白板昆布    

 

苦境を乗り切るため新商品を開発

同じことをやり続けてきたことが、厳しい状況に陥った要因であったことから何か新たな取り組み、新商品開発の必要性に迫られる。そうした時に、北陸新幹線の開業が近づいてきていたことから、何か新商品を開発しなければと焦り始めていた。おぼろ昆布だけ売っていても市場が広がらないことから、おぼろ昆布を使って若い人たちにアピールできるような商品ができないか模索する中、奥さんの主婦目線のアイデアを取り入り、おぼろ昆布を従来の大袋から食べきりサイズの小分けパックにすることに。少子化、核家族化、一人暮らし世帯が増えている時代背景を鑑み、少人数でも食べきれる量のパックに変更したことで、いろんな売場の隙間に入り込む。おぼろ昆布の食べ方や保存方法が分からないという声を多く聞いていたことから、食べ方をそのまま商品名にしたKONBU MAGICシリーズを商品化する。

うどんこんぶ おむすびこんぶ ご飯にかけて食べるこんぶ サラダにかける玄米入りこんぶ

 

食べ方をそのまま商品名にしてヒット

ご飯にかけて食べる昆布を商品化し、それをどんな商品を置いてもよく売れる人気店に置いてもらったが全く売れなかった。そこで、ご飯に合うのならパンにかけてもいいだろうと、「トーストにかけて食べる昆布」にネーミングを替えて販売したところ、全く売れなかった商品がネーミングを変えただけで200本、300本単位で売れるヒット商品に変身する。さらに、パンと昆布の組み合わせが面白いと話題になり、この商品がテレビの「マツコの知らない世界」で紹介され、放送直後は注文が殺到する。ユニークな商品に関心を持ってもらえることで、置いてもらえる売り場が増えていき、そうした相乗効果で、昔ながらの手削りのおぼろ昆布にもスポットが当てられるようになり、手削りのおぼろ昆布職人が石川県内で大脇さん一人という希少性も、商品の付加価値として捉えられるように。食べ方を細分化し、その食べ方を商品名にする、これがヒットの鍵。

こんぶちっぷす 能登わかめ入りみそ汁こんぶ 能登の塩でたべる吸い物こんぶ 午後5時からのおやつこんぶ

 

物産展で縁あった仲間の支援に感謝

能登半島地震の前は、経験したことのないコロナ禍で、業務用卸の納品先である土産物店や道の駅などが軒並み休業状態になり、商品の納入先がなくなりほぼ商品が動かなくなる。その状況を何とかするべく、それまで参加したことのない見本市や展示会に出展し、いろんなつながりができ始めてきていたところへ能登半島地震が発生する。幸いにして、それまで努力してきた種まきが実を結んだ取引が生まれ、復興支援購入という新規のお客さんとのつながりもできる。さらには、30年余り参加していた物産展で親しくなった仲間のお店が、同社の商品を店先に置いてくれるという輪が広がり、そうしたお店で同社の商品を見たお客さんが直接注文してくれるケースも。そんな形で、自社商品の売り場が広がってくると、次の新しい商品を求める声が上がることから、パッケージをリニューアルしつつ、さらなる新商品開発を模索しているところ。新商品開発にあたっては、奥さんの主婦目線のアイデア、ネーミングが大いに貢献している。

ふんわりできる卵焼きこんぶ かつお節入り冷奴こんぶ 納豆にかける玄米入りこんぶ

 

補助金を活用した商品づくり

 いしかわチャレンジファンド(現:新商品・新サービス開発支援事業助成金)を活用して開発した「こんぶ屋さんのまかないスープ」は、当初はあちこちの店舗に出していたが、製造が追いつかなくなったことから、現在は大阪の百貨店の売り場限定の商品に。昆布の粉末、しいたけ、能登の塩、わかめの入ったスープ。作るのに大変手間がかかるため、ホームページには掲載しておらず、大阪の百貨店でしか購入できない限定品。近年は、展示会等に行っても、女性のバイヤーが増えてきており、女性目線の同社の商品は引き合いにつながる確率が高いようだ。

 

 

北海道函館産の真昆布の一等品のみを使用

同社が仕入れている昆布は、北海道函館の白口浜の真昆布を使用し、その中でも一等品のみ。おぼろ昆布、とろろ昆布の場合は、真昆布が一番美味しい。出汁をとる昆布として有名な利尻昆布や羅臼昆布は、おぼろ昆布には向かない。北海道沿岸で140種類以上の昆布が収穫されているが、その産地によって昆布の味や用途が異なる。北海道の昆布も地球温暖化、海水温の上昇、プランクトンの減少など様々な環境要因が悪化してきているため、その影響を受けて年々収穫量が減少してきており、能登町小木漁港の船凍イカの漁獲量が激減しているのと同様に大脇さんは危惧する。このまま何も手を打たなければ、将来的には昆布が獲れない状況も想定される。「おぼろ昆布の需要が減ってきているから供給側もどんどんなくなってきていますが、自分一人になっても何とか留めていきたいとの思いでやっています。」と胸の内を語る。年々魚の漁場が北上しているのと同様に、昆布は北海道でしか獲れなくなり、ゆくゆくはロシアから輸入する時代が来るのかもしれない。

こんぶ  

 

看板商品は手削りの「太白おぼろ昆布」

お土産店、道の駅、サービスエリア、百貨店などへの業務用卸が全体の8割近くを占める。残りの2割が通販や直販である。令和6年は、能登半島地震の復興支援の購入のおかげで売上増に。金沢市内の観光地のお土産店に商品が置かれていることから、昆布を手削りしているのを見たいと、わざわざ能登町の店を訪れるお客さんも増えている。昆布と言えば黒いイメージを持たれているが、おぼろ昆布に使う芯の部分は白く、マグロに例えるとトロの部分。この白い部分だけを削ったものが太白おぼろで、削りたてを口に入れた瞬間にふわっと溶けて昆布の甘さが口の中に広がる。削りたてを食べたお客さんは、異口同音に「甘くてすぐ溶けた」と驚くそうだ。この反応を見るたび、大脇さんは手削り昆布職人としての存在意義、やり甲斐を痛感している。

                               

 

からだ、くらし、よろこぶアレンジメニュー

ホームページのレシピコーナーには、奥さんが自社商品を使ったアレンジレシピが掲載されている。昆布とチキンのバター醤油パスタ、ポキ丼、ジャコのチャーハン、鯖とクリームチーズのブルスケッタ、おぼろ昆布の和風アクアパッツァの5品が、からだ、くらし、よろこぶアレンジメニューとして紹介されている。

         

 

隙間市場を開拓し、次代につなぐ商いを

職人として、昆布が削れなくなった時、原料の昆布が入手できなくなった場合にも継続できるようにしておくため、中心部分のおぼろ昆布に使う部分以外の周囲の昆布を材料に商品化したのが先述のKONBU MAGICシリーズ。これからも能登にゆかりのある産品との組み合わせや、食べ方や使い方をネーミングにすることで、ついつい買いたくなるような付加価値をプラスし、手削りおぼろ昆布の魅力を全国に発信し続けてもらうことを願ってやまない。

大脇一登さんと弘子さん トーストにかけて食べるこんぶ
​     大脇 一登さん 弘子さん                          

 

会社概要

商 号 有限会社 大脇昆布
代 表 代表取締役 大脇 一登
住 所 鳳珠郡能登町宇出津山分4-63-2
電 話 0768-62-3447
URL https://www/ohwakikonbu.jp