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究極のモノづくり(全工程自社工房管理)で、職人技が冴える最高級品質の輪島塗を 塗師屋 うるしの木

印刷ページ表示 更新日:2024年11月21日更新

  

 塗師屋 うるしの木

究極のモノづくり(全工程自社工房管理)で、職人技が冴える最高級品質の輪島塗を 塗師屋 うるしの木

2015年3月の北陸新幹線金沢開業を契機に、金沢を訪れる観光客が急増し、北陸新幹線開業前にはほとんど見かけなかった外国人観光客が毎日のように数多く金沢市内を観光するように。コロナ禍で人の移動が止まる厳しい時期もあったが、コロナ禍が終息したことと2024年3月の敦賀延伸もあり、観光客をターゲットとした商いにはフォローの風が吹いている。金沢を代表する観光地である東山地区・観音町の通りに「塗師屋 うるしの木」の店舗を構える塗師屋いち松・三代目の一松聡司さんにお話を伺った。

 

能登半島地震、能登豪雨の被害を乗り越え

2024年1月1日、能登を震源とする最大震度7を記録した能登半島地震が石川県を襲った。震源地至近の輪島市は甚大な被害を受け、多くの犠牲者が出た。幸いにして一松さんの家族は無事だったが、輪島市内の工房は半壊し、屋根が落ち、輪島塗の仕上げ作業に欠かせない塗りを乾燥させる風呂が雨漏りで使えない状況に。そのため、風呂全体に大きな箱を被せ、ビニールシートで覆うことで、雨が風呂に流れ込むのを食い止めながら、同時にシートに溜まった雨水を排水する余計な作業が増え、本来の塗りの作業が捗らない日々が続いていた。そんな状況に追い打ちをかけたのが、9月21日に発生した能登豪雨による未曽有の大水害。「地震の被害から立ち上がり、何とか作業していた工房に泥水が大量に流れ込み、材料となる木地は濡れたことで歪んでしまい使い物にならなくなり、完成間近の商品や商品を入れる木箱や紙箱が泥まみれになり、損害は数百万円あまりに及びました。弱り目に祟り目ですが、お客さんのためにやるしかないですから。」と一松さんは前を向く。

       
​    地震で家財が散乱した工房        能登豪雨の水害で被災した工房

 

代々自ら顧客を開拓し、問屋を介さない商いに徹す

創業時から自らの商品を担いで関西方面を中心に、全国各地の旅館や料理屋を廻って顧客を開拓してきた長い信頼関係が同社の最大の強み。お客さんと直の商いをしているため、顧客の要望を職人が自ら聞き、その思いをモノづくりに反映させることができ、なおかつ中間マージンが発生する問屋を一切介さない。そのため、百貨店や土産物店の店頭では高価な輪島塗だが、同社の商いは職人の手間賃のみのためリーズナブルな価格で購入できる。旅館や料理屋で日々使用される漆器は使用頻度が高いため必ず傷むことから、修繕の仕事が定期的に発生する。この直し仕事が同社の真骨頂でもある。「全国各地のお客さんから直しの仕事が常に入るため、地震の影響で仕事がなくなったということはありません。」と胸を張る。

輪島塗 輪島塗

 

分業体制の輪島塗を全工程自社工房管理に

伝統的工芸品として日本を代表する漆器である輪島塗は、木地づくり、木地に漆を塗る漆塗り、それに沈金や蒔絵で装飾する加飾の3つの段階があり、周知のとおり約100工程を経て一つの商品が出来上がる。この工程の各作業を、それぞれ専門の職人が分担する分業体制が長年の産地の仕組みである。ただ、そうした分業体制にはマイナス面もある。それは、各分野の職人は自分の分担する作業のみに携わり、その後どのような商品に仕上がっていくのか全く関知しない。つまり、職人の横の連携がないことで、他の作業工程に干渉することなく、商品のイメージも共有しづらく、工程ごとにクオリティーがばらばらになってしまう。そこで、同社では、塗りの作業を分業ではない全工程を自社の工房で管理することで、技術や品質に偏りのないクオリティーの高い商品を世に送り出してきている。「人に任せると自分が思っていた通りのモノがなかなかできません。それなら自分で全てやる方が納得できる商品になる。」との職人魂に他ならない。

       

 

金沢に出店し、新たな可能性に賭ける

世の中はバブルが崩壊し、高価な輪島塗が売れなくなり始めていた平成8年、父で二代目の一松春男さんが、塗師屋として新たな顧客開拓につなげることを目的に、金沢市主計町に「塗師屋 うるしの木」を出店する。平日は輪島の工房で塗りの仕事をし、二代目夫妻の手作り商品を並べ土日だけ金沢の店を開けるスタイルで営業を始める。そんなある日、偶然にもアーティストの田原桂一氏が店を訪れ、二代目の手仕事の素晴らしさに惚れ込む。以来、田原氏の作品の仕上げの塗り工程を任されるようになり、二代目が関わった田原氏の作品が、有名雑誌で紹介され、東京の美術館で展示されるなど、二代目の名前が広く知られるように。遡ること17年前、主計町から観音町へ店舗を移転し、今日に至る。「その頃は、北陸新幹線の金沢開業前だったため、今日のようなお店だらけの通りではなく、東茶屋街に比べると観光客も少なく静かな通りだったので、本当に様変わりしました。」と述懐する。

塗師屋 うるしの木  

 

業務用の需要と修繕が売上の七割強

現在の売上比率を伺うと、旅館や料理屋といった業務用の需要と修繕業務が全体の7割強を占めているとのこと。そうした業態のため、修繕品を直して顧客に送ると、次の修繕品が送られてくるという繰り返しの商いでやってきており、敢えて表に出て名前を売る必要もなかった。金沢の店舗は、輪島の工房での仕事が忙しく、週末ぐらいしか開けられないのが現状で、観光客は連日押し寄せているものの、そこまで観光土産としての売上は大きくはない。それでも北陸新幹線開業前に比べると、売上は伸びてきているとのこと。人を雇えば毎日開けることはできるが、輪島塗は商品がどのように作られているのか、その工程をしっかり説明できる人がいないと、お客さんは納得して買えない。なかなかそうした人材がいないのと、新たに人件費が発生すると商売として成り立つかという微妙な問題もある。急増する外国人観光客向けに英語の説明パンフレットは常備してあるとはいえ、直接説明できる人には叶わない。

     

 

消費者向けの販売に取り組みマージンの壁を知る

問屋を介して顧客に商品を販売してきている輪島塗の業界で、顧客と直接やりとりしている同社のような存在はとても珍しく、これまで自分の店以外へ卸す小売をしたことがなかった。ある時、百貨店や小売店に商品を置いてもらうために問屋を通す、あるいは卸す場合はどういう流れになるのか調べたところ、4割から6割あまりのマージンを取られることを知り驚いたという。同社の商品は、販売マージンを加味していない直販価格のため、そのままの価格では利益がなくなり卸ができない。上代価格を上げるしかないが、そうなると店頭もオンラインショップも同一価格でないとおかしなことになる。卸すことを考えた時、マージンを払うために商品の対価に釣り合わない高い値段をつけることには職人として抵抗がある。そんな頭の痛い壁に直面している。​​

   

 

塗師としての心構え

子どもの頃から父親が塗りの仕事をしている姿を毎日目にすると共に、お客さんのところへ行商しに出かけている姿を見て育ったことから、心のどこかでゆくゆくは後を継ぐことは思っていたという。とはいえ、若い時はとてもこの仕事では食べていけないと感じ、サラリーマン生活も経験する。「三代目を継ぐかどうするか迷う日々を送っていた時に、長年のお得意先から、『ある程度まとまった仕事を途切れなく出すから頑張ってみないか』と背中を押され、心が決まった。」と述懐する。二代目の下で修業している時に、いいモノを作るにはどうしたらいいのかを尋ねた時に、「心を込めてやるんや」と言われた父の言葉が、最近は身を以って理解できるようになってきたそうで、一工程、一工程、一切手を抜くことなく、やるべきことをしっかりとやる。少しでも納得できない部分が目に止まったらすべてやり直す。この精神で日々邁進し、輪島塗と言えるモノづくりの仕上げはすべて自分でやると肝に銘じる。

   
​                           ​ 二代目 一松春男氏

 

いち松の最高級ブランド「波涛」

これまで職人として、満足できるいい商品を世に送り出してきたが、この商品はいい商品ですと言うだけでは、客観的なランク付けがあるわけではないため、世界標準として通用しないことに気づかされる。商品のランク付けというか、客観性のある評価基準的なものの必要性を感じるように。そんな思いから取り組み始めたのが、いち松の最高級ブランド「波涛」である。輪島塗の深遠な色合いに金箔をあしらい、透明度の高い朱合漆で上塗りする。これによって、静寂感のある輪島塗のデザインに金箔が映え、器に生命の強さ、躍動感を表現している。「波涛」は、幾重にも漆を塗り、金箔を施し、独自に調合した朱合漆で仕上げているため、経年変化により、年を重ねるごとに色味が変化し、表面の金箔の持つ独特の風合いと相俟ってミステリアスな意匠が浮かび上がり、輪島塗の色味の変化に長い人生を重ね合わせ、その人その人の滋味を愉しんでもらいたいとの職人の至芸で創り出された、冬の能登の海に現れる大きな波と波の花のイメージを器に表現した最高級ブランドである。

                               

 

新しい時代の塗師屋をめざし

これまで職人として、満足できるいい商品を世に送り出してきたが、この商品はいい商品ですと言うだけでは、客観的なランク付けがあるわけではないため、世界標準として通用しないことに気づかされる。商品のランク付けというか、客観性のある評価基準的なものの必要性を感じるように。そんな思いから取り組み始めたのが、いち松の最高級ブランド「波涛」である。輪島塗の深遠な色合いに金箔をあしらい、透明度の高い朱合漆で上塗りする。これによって、静寂感のある輪島塗のデザインに金箔が映え、器に生命の強さ、躍動感を表現している。「波涛」は、幾重にも漆を塗り、金箔を施し、独自に調合した朱合漆で仕上げているため、経年変化により、年を重ねるごとに色味が変化し、表面の金箔の持つ独特の風合いと相俟ってミステリアスな意匠が浮かび上がり、輪島塗の色味の変化に長い人生を重ね合わせ、その人その人の滋味を愉しんでもらいたいとの職人の至芸で創り出された、冬の能登の海に現れる大きな波と波の花のイメージを器に表現した最高級ブランドである。

塗師屋 うるしの木 母 たみ子さん(沈金師) 聡司さん(塗師)
                ​母 たみ子さん(沈金師) 聡司さん(塗師)

 

会社概要

商 号 塗師屋 いち松
代 表 代表 一松 聡司
住 所 工房 輪島市中段町長口37-4
​店舗 金沢市観音町1-3-10
電 話 工房 0768-22-7546
店舗 076-252-2087
URL http://urushino-ki.com