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近年、金沢市内を車で走っていると、デイサービス、デイケアサービスと車体に記載された送迎車を頻繁に目にするようになってきた。団塊の世代が大量に退職し、その人たちがいわゆる高齢者の仲間入りをしたことで、日本の高齢化率は一段と高くなっている。身の回りのことを全て自分でこなせる健康な方もいれば、足腰が弱り車いす生活の方、病気で寝たきりの方とさまざま。そんな中で、今の状態が悪化して要介護状態に進むことを予防し、自立した生活を維持するため要支援や介助があれば外出できる要介護1または2の方を対象に、生涯現役をサポートするデイサービスLIVE A LIVE代表の西村哲平さんにお話を伺った。
西村さんは、父親が社会福祉施設の職員として働いている姿を見て育ったこともあって、頭の片隅に、将来福祉の仕事に関わるのも悪くないなぁとの思いを無意識のうちにもって育っていた。とはいえ、社会人になった西村さんは福祉とは全く異なる道を目指していた。学生時代から仲間とバンド活動に明け暮れていて、バンドマンとして食べて行くことを望んでいたが、音楽でプロを目指す道は並大抵ではなく、止む無く断念する。やはり、自分は福祉の仕事、中でも介護の仕事がやりたいとの思いが強くなり、金城大学の社会福祉士コースで専門知識を習得し、福祉分野の企業に就職。そこで介護の仕事に本格的に取り組み、自分の向いて いる仕事、やり甲斐のある仕事は介護であることを再認識する。

日々介護の仕事に取り組む中で、会社としての考え方や運営方法など、働いているうちに、自分なりに問題点や、もっとこうしたい、こんなふうにしたいと思うところが、少しずつ見え始める。やはり、同じ介護の仕事をするのであれば、自分の思うようにやらないと気が済まない自分がいた。その時に考えたのが、現在のやり方である短時間の運動型デイサービス。入浴や食事を提供するとなると、人手も設備も必要で安全面、衛生面と大変な労力を伴うことから、初めからそれはやらないと決める。浅く広いデイサービスではなく、質の高いデイサービスを提供する方が、利用者から見た時に何をしてくれる施設かが明確に理解され、質の高さを追求した施設運営に徹することが、自らの目指す道であることを痛感し、それを実現するためには、独立して運営するしかなかった。

西村さんが起業を決意した時期はまさにコロナ禍だったが、社会福祉法人で勤めていた間に、独立のための資金を貯めていたが、独立開業に必要な資金にはまだまだ足りなかった。石川県産業創出支援機構の専門家派遣を活用し、事業計画書を作成し、当初予定していた金融機関に相談するも、なかなかいい返事がもらえず、借り入れが難航していたが、最終的に地元の信用金庫と日本政策金融公庫の協調融資を取り付けることができ、両親からの資金援助もあって、資金面はメドが立つ。介護の仕事をするには法人化する必要があったため、令和4年2月にGIVE合同会社を設立。いよいよどこに店舗を構えるか、インターネットで1階に店舗があり駐車場もそれなりの台数が止めることができる金沢市内の物件を探した中で、半年後に現在の元レストランだった物件に出会う。

西村さんは大の猫好きで、自宅で猫を飼っていることもあり、施設の玄関にはかわいい猫のスリッパが並べられ、来客を和やかなムードで出迎えてくれる。なおかつ西村さんが明るく元気な声掛けで迎えてくれ、デイサービスの施設に来たことを忘れるぐらい、とにかく明るい雰囲気が第一印象。レストランの面影が残る壁や天井の装飾を活かしつつ、デイサービスの施設としてゆったりと使えるように改装。レストランの厨房だったスペースは、壁や厨房機器を全て撤去し、床を補強して、今はフィットネスマシンがずらりと並べられている。中庭に面して大きなガラス張りのつくりであるおかげで、施設内が明るく、より開放的な雰囲気を醸し出している。

利用者の皆さんを送迎車で市内の自宅まで迎えに行く→施設到着後、血圧や体温など運動前の体調チェック→グループに分かれての運動・マシントレーニング⇔癒しタイム(マッサージ器具や水分補給など)→スタッフによる日替わりプログラム(シナプソロジーや集団運動等)→送迎車で利用者の自宅まで送るというのが、大まかな流れ。屋内での運動だけでは歩行能力の維持・向上をしていくには不十分なことから、定期的に近隣の公園や博物館、工場等の普段なかなか歩くことが少ない場所への屋外歩行訓練の機会も設けている。スタジオ内の運動風景を眺めていると、あちこちで利用者の笑い声が上がり、笑顔で楽しそうに運動する姿が見受けられ、利用者にとって楽しみなひとときであることが一目瞭然。そうした雰囲気を創り出す上で、西村さんの声掛け、気配り、目配りは素晴らしく、いろんな場面でユーモアを交えながら、常に利用者のお年寄りに笑う機会を巧みに演出している。現在は西村さんを含めて介護福祉士2名、社会福祉士1名、作業療法士1名、介護士1名、准看護師3名の体制で運営している。

普段慣れない動きをすることで脳に適度な刺激を与えて活性化を図るプログラム及び手段であるシナプソロジーを導入している。「2つのことを同時に行う」「左右で違う動きをする」などの簡単な基本動作をまず覚えてもらう。その後、五感からの刺激や認知機能への刺激を変化させていき、それに反応することで脳を活性化させていく手法のことで、複数人で楽しく行うことで、感情や情動に関係した脳機能も活性化され、認知機能や運動機能の向上と共に、疲労感や抑うつ感の低下も期待されるとのこと。大人数で運動することで、あちこちから笑い声が聞こえ、マスク越しではあるが、みんなが笑顔で運動している様子が見て取れ、相乗効果が確実に出ていることを体感させられる。

利用料金は介護保険料が1割負担の人、2割や3割負担の人で異なるが、基本料金は以下のとおり。要支援1 月額1,891円/週1回、要支援2 月額3,833円/
週2回、要介護1 575円/1回、要介護2 645円/1回。地域密着型通所介護・介護予防型通所サービス・基準緩和型通所サービスを提供しており、利用者の所得により、金額は前後する。そのほかにドリンクバーサービスや筋力や健康意識の高い方にはプロテインを提供している。高齢者デイサービスと聞くと、何となく暗いイメージを抱きがちだが、玄関ドアを開けた瞬間に、楽しく、元気で、明るい、そんな空気感に包まれ、まさに従来のイメージを一新させられる。

最後の集合写真をご覧いただくと分かるが、現在では西村さんのご両親もスタッフの一員として施設の運営をサポートし、家族が一丸となって地域のお年寄りに元気と活力を日々プレゼントしている。運営面でも売上、利益ともに順調に推移しており、自分の時間を削ってでも、スタッフに完全週休二日はもちろんのこと、給与面でも精一杯の支給に努めている。デイサービスではあるがお客様が週に2回か3回、近所の行きつけの喫茶店やジムに通うような、お楽しみの一つになることが西村さんの考えるデイサービスであり、介護というよりも、ご高齢の方が楽しく交流できるひととき、集まれるサロンのような場を提供したいとの思いが形になっている。スタッフに対してはこれから福利厚生面を充実すること、退職金制度を確立することが課題とか。他のデイサービスにない個性的な尖ったサービスを提供しながら、スタッフを育てて店舗責任者として1つの拠点を任せ、自らは2号店、3号店と、拠点を増やしながらLIVE A LIVE(充実した今を生きる)の認知度を高め、アクティブなシニア層を増やしていくことに邁進していく所存である。
西村代表(写真中央)
| 商 号 |
デイサービス LIVE A LIVE |
|---|---|
| 代 表 | 西村 哲平 |
| 住 所 | 金沢市福久1丁目114番地 |
| 電 話 | 076-255-6350 |
| U R L | https://give-livealive.com |