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こんにゃくメーカーとして知られる株式会社オハラの小原繁社長は、こんにゃくが冬場の商品であることから、夏場の売上を確保することを考え、ところ天の機械を使ってくずきりを商品化したのが、同社の多角化への第一歩となった。
ある時、農産物生産者との交流を深めたいと思い、五郎島金時の生産農家を訪ねたところ、五郎島金時には違いないものの、「形が悪い」「大きさや重さが足りない」など出荷できない、いわゆる規格外の五郎島金時が相当量ある現実を知る。
そこで、形が悪くても味は同じことから、焼き芋にして皮を剥き、それをペースト状にしてスイートポテトを作り、大阪の阪急百貨店の店で試験販売してみたところ、たちまち大行列ができ、あっと言う間に完売となった。
「農家が丹誠込めて作ったにもかかわらず、形や大きさが規格外のために日の目を見ない規格外品に、一次加工を施してペーストにしただけで、こんなに売れるのであれば農家にとってもこんなにいいことはない」と小原社長が痛感したのが平成20年のことであった。
五郎島金時の規格外品のペースト化がきっかけとなり、県内のさまざまな食材の規格外品を使った商品開発への取り組みをスタートさせる。
この取り組みについて、株式会社オハラの小原社長にお話を伺った。
時を同じくして、いしかわ産業化資源活用推進ファンド(以下、活性化ファンド)が創設され、地域資源を活用した新たな商品開発を県が資金面からサポートする体制が整い、同社も活性化ファンドの採択を受ける。
規格外商品とはいえ、ある程度の量を確保するためには生産者側と交渉しなければならない。「それまでは私が直接連絡をした場合、「どちらさま?」と言われるのが常だった」と小原氏は述懐する。
ところが、活性化ファンドの認定を受けたことで、石川県産業創出支援機構(以下、ISICO)が仲介役として、農協や漁協とのマッチングをコーディネートいただいたことで、それからは苦労なく責任者に会えるようになり、話がスムーズに進むようになった。
なおかつ、この助成金を活用して一次加工用の機械を導入できたことも同社にとって大きかった。
江崎グリコが各県の名産物を育んだ「自然」「大地」「そこに住む人々」に着目し、地元の紹介や生産者のこだわりをホームページ等で発信しながら展開する「地元ポッキー」を展開するにあたり、北陸地方の特産品を何点かピックアップし、試作を重ねた中で最も美味しく、チョコレートとの相性が良かったのが「五郎島金時」だったことから、商品化が決まる。
さらに、江崎グリコ株式会社の担当者がいろいろ調査した中で、株式会社オハラのこれまでの様々な取り組みが紹介されているところに辿り着き、同社に五郎島金時のペーストの発注が来ることになり、JA金沢市-オハラ-江崎グリコの農商工連携が実現する。
江崎グリコも農協から現物の芋を仕入れても加工ができないわけで、オハラがかねてより一次加工に取り組み、五郎島金時のペーストを提供できる環境にあったからこその商談成立である。
五郎島金時がナショナルブランドである江崎グリコの誰もが知っているポッキーに使われたことは、宣伝効果の観点から非常に大きなものがあり、五郎島金時の知名度アップにも貢献している。
江崎グリコ株式会社は全国で8種類の地域限定ポッキーを販売している中で「五郎島金時ポッキー」が圧倒的に売れている。
江崎グリコの担当者曰く「石川県はISICOが地元企業とバイヤーを仲介するなど、深いつながりができていている」と。「さらに知事表敬も実現し、直接食べていただいた際に"おいしい"とのお言葉をいただき、新聞やテレビでも紹介されたことで地元の人にも新商品のことが広く浸透し、観光客だけでなく地元の人たちも買ってくれる相乗効果が生まれ、断トツで売れているのでは・・。地元の人たちが地元の商品を愛していて、地元の購入が多いからではないか」と分析する。
従来からのスイートポテト用などに加え、今回の五郎島金時ポッキーの売れ行きが想定外に好調なため、五郎島金時のペーストの需要が伸び、今は規格外品が足りない状況に。
そこで農林漁業者、商工業者双方の抱える課題・問題点について検討、意見交換を行い、win-winの関係を保ちながらの連携方策を探るためのプラットホームとして、「農商工連携研究会」を設立し、初めから加工向けの五郎島金時を栽培する畑を作れないか検討を行っている。例えば、スーパー向けの五郎島金時はサイズ・形・大きさ等々で36通りに細かく分別されており、大変な手間がかかっている。
また、農研機構の九州沖縄農業研究センターとも連携し、機械化技術を取り入れながらとりあえず畑2枚分のスペースで今年から収穫実験がスタートする。
この五郎島金時ポッキーのコラボレーションを担当したISICOのコーディネーターは、農業分野の専門家であるだけでなく、その業界の人脈もある専門家がアドバイザーとして在籍していることが特徴で、連携が非常にスムーズに運ぶ大きな要因でもある。
また、オハラが大手コンビニチェーンとの取引実績があることも、品質管理や安全面でメーカー側も安心して発注できる信用にもつながっている。
売り先がどれだけあっても、農産物が確保できなければ仕事にならないことから、ISICOの農商工連携のマッチング支援を受けられる仕組みが構築されていることが何よりの強みである。
原料はオハラの一次加工という作業工程を経ることで商品化となるきっかけが生まれたことから、同社は農商工連携推進の一翼を担っていると言っても過言ではない。
と同時に、その素材を探して量を確保できるかどうかはISICOの農商工連携マッチング支援が必要で、どちらが欠けても事が前に進まず、車の両輪のような関係性が成立している。
五郎島金時ポッキーは、当初の販売予想の1.5倍超えの売れ行きとのことで、農商工連携がスムーズに行われている石川県だけに、何か他の食材を活用したポッキー以外のお菓子とのコラボレーションが生まれる可能性も期待できる。
商号 | 株式会社 オハラ |
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住所 | 石川県金沢市柳橋町甲14番地1 |
TEL | 076-288-6572 |
URL | http://www.ohr.co.jp/ |
商号 | 江崎グリコ株式会社 中部エリア支店 北陸グループ |
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住所 | 石川県金沢市広岡1丁目3番10号 WESTビル3階 |
TEL | 076-210-6851 |
URL | https://www.glico.com/jp/ |
商品情報 | https://cp.pocky.jp/jimoto-pocky/region/ (江崎グリコ 地元ポッキー一覧) |
商号 | 金沢市農業協同組合(営農部) |
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住所 | 金沢市松寺町未59-1 |
TEL | 076-237-3945 |
URL | https://www.ja-kanazawashi.or.jp/ |