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いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集
2016.AUTUMN|VOL.01
生産者や消費者販売店の皆さんを
笑顔にしたい。
【活性化ファンド採択メニュー】
平成21年度 農商工連携事業(一次加工施設整備支援)
平成23年度 産業化資源活用事業(商品開発・事業化支援)
ゼリーやこんにゃくなどの食品加工を手がけるオハラでは、活性化ファンドの助成を受けて導入した加工機を活用し、焼成した五郎島金時をすりつぶしてペースト状にしたものをコンビニエンスストア大手のセブン-イレブンに納めている。
原料に用いている五郎島金時は、味は良くても、収穫時に傷が付いたり、形が悪かったりする規格外品だ。セブン- イレブンではペーストを材料に使ったパフェやケーキ、プリン、ようかん、パンなどを開発し、全国約1万9,000店で販売している。
取引は平成21年にスタートして、オハラでは毎年秋になると1カ月に50トンのペーストを出荷しており、今や同社売り上げの約20%を占める主力事業となっている。
五郎島金時のペーストを使った商品の売れ行きは上々で、需要の拡大に対応するため、オハラでは平成25年から工場の操業開始時間を午前9時から午前5時に繰り上げ、増産に取り組んだ。
増産に向け生産体制を整えようと、午前5時から午前9時半まで勤務するパートタイム労働者として採用したのが60歳以上のシニア人材である。平成25年から採用を始め、現在は平均年齢約70歳の22名が働いている。在宅中の高齢者の目に留まるよう、募集には、新聞折り込みのチラシを活用した。
「高齢者の方は早朝からの仕事もまったく嫌がりません。それどころか午前4時半までにはほとんどの方が出社してくる。遅刻や欠勤もありませんし、労働意欲の高い方ばかりで、自主的に休日に会社に出てきてフォークリフトの運転を練習する人もいます。ですから、当社ではシニア人材の皆さんを、敬意を込めて“ 達人”と呼んでいるんです」(小原繁社長)。
その意識の高さは若い社員にも好影響を与えているという。
そもそも同社が出荷基準を満たさない農産物の活用に乗り出したのは平成15年にさかのぼる。
「サイズが小さかったり、形が良くなかったりしても、農家の皆さんの愛情がたっぷりこもっていて味もおいしい。良いものを安く仕入れ、ひと手間かけて商品化すれば、農家や消費者、販売店に喜んでもらえるに違いない」。そう考えた小原社長は、五郎島金時や能登大納言などを材料にプリンやぜんざいといった商品を開発してきた。
こうしたオハラの取り組みに興味を示したのがセブン-イレブンだった。セブン-イレブンでは規格外農産物の中でも五郎島金時に着目し、そのペースト加工をできないかと小原社長に打診してきた。オハラでは当時、五郎島金時を焼成し、ペーストにする加工は生産農家で行っていた。しかし、それではセブン- イレブンが求める設備面や衛生面の基準をクリアできない。そこで、自社工場内の空きスペースを利用して、ペースト加工に必要な焼成機、皮と実の分離機、真空包装機などを導入したのだ。
設備投資を後押ししたのが活性化ファンドだった。小原社長は「当時は公的機関に加工機を購入するための助成制度がなかったので助かった。活性化ファンドがなければ、設備投資に踏み切ることは難しかった」と振り返る。
五郎島金時のペースト加工事業は、経営の安定化を図るという面でも大きな役割を担っている。というのも、オハラの主力の一つであるこんにゃくの売り上げがピーク時に比べ、減少しているからだ。
例えばこんなことがあった。オハラでは数年前まで大手コンビニ向けのおでん用しらたきを中国で委託生産していた。しかし、納入先から「国内生産に切り替えてほしい」と要請を受けた際、人手でしらたきを結ぶ作業がネックとなり、全店分の生産体制を整えられず、やむなく受注数を半分に減らしたのだ。小原社長にとってみれば苦渋の決断だったが「このとき生じた売り上げの落ち込みをカバーすることができたのは、活性化ファンドによって五郎島金時のペースト加工が軌道に乗ったから」と振り返る。
一方で、活性化ファンドで導入した加工機は、自社ブランド商品の開発に活躍している。これまでに、ほくほくに焼き上げた五郎島金時や金沢港で水揚げされた新鮮な甘エビを粉末状にして練り込んだ「がんこおかき」、五郎島金時や能登産の塩を使った「芋けんぴ」を商品化し、自社のネットショップや通販カタログで人気商品となっている。
これ以外にも石川県生まれのブドウの新品種ルビーロマンと能登ワインを使ったゼリー、能登町の小木港で水揚げされたイカが入った炊き込みご飯の素など、ISICOの協力を得て県内各地の規格外農水産物を使った商品開発に取り組んでおり、売り上げも好調だ。
「農水産物を作る人とできた商品を食べる人、あるいは生産する地域と消費する都市の架け橋になりたい」と小原社長。せっかく手塩にかけて育て、味もおいしいのに、少し曲がっているだけで売り物にならない。これからもそんな農水産物に光を当て、企業の成長に結びつけていく考えだ。
がんこおかき/ 芋けんぴ
オハラが製造する自社ブランド商品。 「がんこおかき」には現在、五郎島金時と金沢港で水揚げされた甘エビを使った2種類がある。 五郎島金時の「芋けんぴ」は素材の味をそのまま楽しめるものと能登の塩を振ったものの2種類を展開している。
・規格外の五郎島金時を有効活用
・大手コンビニのニーズを捉えて設備投資
・高齢者を活用して増産に対応
企業名 |
株式会社オハラ |
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住所 | 金沢市柳橋町甲14-1 |
TEL | 076-288-6572 |
事業内容 | ゼリー、プリン、こんにゃく、 農水産物加工品等の製造・販売 |
設立 | 昭和53年4月 |