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匠の技を生かした蒔絵アクセサリー 工房を支える柱に成長「Classic Ko」 ~漆工芸 大下香仙工房

印刷ページ表示 更新日:2017年9月29日更新

ViVO いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集  いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集

2016.AUTUMN|VOL.01

CASE 05 漆工芸大下香仙工房

大下香征専務 写真 アクセサリーならば、
蒔絵の未来をたぐり寄せられる。

【活性化ファンド採択メニュー】
平成21年度 産業化資源活用事業(小規模企業者支援)
平成24年度 産業化資源活用事業(小規模企業者支援)
平成28年度 産業化資源活用事業(商品開発・事業化支援)

匠の技を生かした蒔絵アクセサリー 工房を支える柱に成長

伝統工芸と人の距離を縮める蒔絵の新たな可能性を提案

百貨店の催事を中心に販売

金澤東山しつらえ 写真 大下香仙工房は120年余りの歴史を持つ加賀蒔絵の工房である。10年前から蒔絵で培った技術やデザイン力を生かしてアクセサリーを制作し、それらの商品が今では実に70%を占める主力商品に成長。同工房の成長を支える原動力となっている。

 アクセサリーのベースとなるのは白蝶貝や黒蝶貝といった天然素材である。これに金粉や銀粉を蒔いたり、漆を塗り込んだりして絵柄を描いた後、丁寧に磨き上げ、チェーンなどの金具を組み合わせてネックレスや指輪、ピアス、ブローチなどに仕立てる。「Classic Ko(クラシック コー)」というブランド名で展開し、年2回、それぞれ5~10種類の新作を発表している。一つ一つ熟練した職人の手によって仕上げられていくアクセサリーは、現代のライフスタイルに合うモダンなデザインで、アンティークジュエリーのようなシックな雰囲気が特徴だ。
 販路の中心は東京の伊勢丹新宿店、松屋銀座をはじめ、首都圏や関西圏の百貨店の催事で、セレクトショップなどでも販売している。徐々にブランドが定着してリピーターも増え、近年では出店を待ちわびた女性客が催事の初日にどっと押し寄せることもある。

普段の暮らしに蒔絵を

 大下香仙工房では創業以来、主に棗(なつめ)などの茶道具に蒔絵を施す仕事を手がけてきた。しかし、茶道具の売り上げが減り、このままでは存続が危ぶまれるとの危機感から新事業への挑戦が始まった。
 器や照明器具など、さまざまな商品を試すなかで、気付いたのは「高価な商品の価値をさらに高める」という蒔絵の特性だった。そこで同工房では平成21年度に採択を受けた活性化ファンドを利用し、蒔絵を施した万年筆の制作をスタート。現在も売り上げの30%を占めるまでに育っている。
 ただ、万年筆の場合は要となる本体を作ることができず、修理の要望にも対応できない。これでは自社ブランドとして展開するには限界があると感じ、取り組んだのがアクセサリーだった。
「普段の暮らしに蒔絵を取り入れてもらうにはどうしたらいいか。そう考えてたどり着いたのがアクセサリーでした。アクセサリーであれば、蒔絵の工房が主導権を持って制作できますし、自分たちが見えていない蒔絵の未来をたぐり寄せられるのではと思いました」(大下香征専務)。
 制作にあたっては、デザインはもちろん、サイズや重さ、金具の使いやすさなど、装身具としての機能性にも十分配慮した。現代の装いに違和感なく取り入れることができるよう、蒔絵を過剰に施しすぎないようにしたり、蒔絵に合わせて高級感のある金具を採用したりするなど、試行錯誤しながらアクセサリーとしての完成度を高めていった。

展示会通じて販路を開拓

松屋銀座・手仕事直売所で開かれたイベント時のディスプレー 写真 アクセサリー事業の成長をサポートしたのが活性化ファンドだった。同工房では平成24年度に再び採択された活性化ファンドの助成金を活用してファッションとデザインの合同展示会「rooms(ルームス)」に出展。こうした展示会への出展が百貨店の催事への出店やアパレルメーカーからの受注につながっていった。
 展示会を通じてジュエリーメーカーの人脈が増えたことも成果の一つで、アクセサリーに使う金具やパーツを供給してくれる協力企業の拡大に役立った。
 販促に向けては、ブランドの認知度をアップさせるため、助成金を使ってパンフレットやダイレクトメールなどの広報ツールを制作。また、ブランドの持つモダンでシックな世界観をお客様に感じてもらうため、売り場にはフローリストの協力を得て植物を飾り付けるなど、ディスプレーにも工夫を凝らしている。
 さらに、ブローチやペンダントの制作を体験してもらうワークショップを渋谷ヒカリエで開催するなど、蒔絵についての理解を深めてもらうための取り組みにも力を注いでいる。

他産地とのコラボや海外展開も 

 アクセサリー事業の可能性をさらに広げようと、他産地との連携にも積極的に取り組んでいる。その一つが山梨県の伝統工芸「甲州水晶貴石細工」とのコラボレーションである。水晶に蒔絵を施すなどして、これまでにない高付加価値のアニバーサリー・ジュエリーの開発を目指すもので、平成28年度の活性化ファンドにも採択された。
 海外市場への挑戦も今後の目標だ。手始めとして、今年10月から半年間、パリ市内に開設されている日本製商品のショールーム「maison wa(メゾン・ワ)」に蒔絵アクセサリーを出品。11月には大下専務も渡仏し、今後の本格販売を視野に協力者を探す。
 一方で、「地元でも工房で作り手が作業する様子を見られるようにして、伝統的な技術の良さを感じてもらった上で、商品を購入してもらえるようなショップもゆくゆくは整備したい」と話す大下専務。蒔絵の魅力が存分に発揮できる市場を求めて、これからも挑戦が続く。


Classic Ko 写真Classic Ko
繊細な蒔絵が施されたブローチと指輪、ピアス。価格は2万円台から。天然素材を組み合わせて作っていくので、同じデザインでも一つ一つ微妙に表情が違う。「母親の還暦のプレゼントに」などギフト用に購入されるケースも多い。帯留めとして仕立て直す人もいる。

成功のエッセンス

・伝統の蒔絵をモダンなアクセサリーにリ・デザイン

・ファッション関連の展示会で販路や協力先を開拓

・ブランドの持つ世界観を表現する売り場作り

企業名 漆工芸 大下香仙工房
住所 加賀市二子塚町103-2
TEL 0761-77-5250
事業内容 蒔絵の制作、漆工芸品の企画・製造・販売
創業 明治27年

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