ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 石川産業化資源活用推進ファンド事例集 ViVO > メニュー > ViVO 2017.AUTUMN | vol.03 > 目指すは漆の“当たり前化” 今の暮らしに合わせて使いやすく ~輪島キリモト

目指すは漆の“当たり前化” 今の暮らしに合わせて使いやすく ~輪島キリモト

印刷用ページを表示する更新日:2017年12月22日更新

ViVO いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集  いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集

2017.AUTUMN|VOL.03

CASE 07 輪島キリモト

桐本泰一代表の写真

漆は決して特別じゃない。
毎日の生活の中で、当たり前のように使ってほしい​。​

【活性化ファンド採択メニュー】
平成23年度 産業化資源活用事業(商品開発・事業化支援)
平成25年度 産業化資源活用事業(商品開発・事業化支援)
平成27年度 産業化資源活用事業(商品魅力向上支援)
平成28年度 産業化資源活用事業(商品開発・事業化支援)

目指すは漆の“当たり前化” 今の暮らしに合わせて使いやすく

傷が付きにくい器が人気 建築空間にも漆の美を

外資系ホテルなどに採用実績

輪島キリモトが手がけたザ・リッツ・カールトン東京の寿司カウンターの写真 美しく堅牢で、実用品として評価を高めてきた歴史を持つ輪島塗。バブル期は高級品、美術品として売り上げを伸ばしてきたが、時代は変わり、現在はかつての勢いを失っている。そんな中、「高級美術品路線は一時のブームに過ぎない。この先も長く作り続けていくためには、伝統的な技術や材料、職人を生かしながら、今の暮らしにとけ込むような新たな取り組みが必要」(桐本泰一代表)とチャレンジを続けているのが輪島キリモトだ。
 取り組みの一つが平成23年から本格化させた建築内装材への展開である。きっかけはヒルトン東京に漆塗りのカウンターを納めたことだった。その後、桐本代表は活性化ファンドの助成金を活用し、布や和紙を貼って表情に変化を持たせたものなど、A4サイズ、20数種類の板状サンプルやカタログを制作。これらを持参して売り込んだところ、外資系ホテルとの取引が多い設計事務所との商談につながり、これまでにザ・リッツ・カールトンの東京/京都などのカウンターや壁面、扉などに採用された実績を持つ。
 漆には木材の防腐や防水、防虫効果があり、輪島では柱や廊下、階段などに拭き漆が施されている家が多い。加えて、大学でプロダクトデザインを学んだ後に入社したコクヨで高層ビルの内装を任された桐本代表が、白やグレーのパネルを張り巡らされた空間を見て、「漆を使えばもっと温かな雰囲気になるのに」と感じたことが、建築内装材へと展開する原点となった。
 今では漆の家具、建築内装材が同社の売り上げの20%以上を占めるまでになり、事業の柱として成長している。現在は新たに30×30センチ、20×60センチの漆パネルを商品化。石板等に代わる素材として漆の可能性を広げようとPRに努めている。

従来技法よりも表面を硬く

  主力となる器の分野でも「傷が付きやすくて扱いにくい」といったネガティブなイメージを覆すような、今の生活スタイルの中でも使いやすい漆器の開発に取り組んでいる。
 平成25年に活性化ファンドの採択を受けて独自に開発した「千すじ」シリーズはその好例だ。これは天然木に漆と米のりを混ぜたものをしみ込ませた布を貼り付け、下地塗りを施した後、輪島産の「地の粉」(焼成した珪藻土の粉末)と漆を特殊なはけで塗り込み、さらに何度も漆を塗り重ねて仕上げた器である。地の粉は輪島塗に欠かせない材料で、従来の技法よりも表面に近い部分で使うことによって表面を硬くすることに成功した。金属製のスプーンやナイフ、フォークを使っても傷が付きにくく、毎日の暮らしの中で気兼ねなく使える。
 また、表面の細かな筋模様が美しく、落ちついた色合いが料理を引き立てる。使い込んでいくと少しずつ色が明るくはっきりと変化するのも楽しみだ。
 普段漆器をあまり購入しない20代後半から40代の消費者から好評で、売り上げは右肩上がりに伸びている。製造できる職人が一人しかいないため、生産が追いつかないこともあるほどだったが、今年7月からは初の女性職人を塗り部門で採用すると同時に、下地塗りの一部を市内の職人に依頼し、増産に対応している。
 さらに、平成27年には千すじや麻布の質感を生かした洋食用プレート(平皿)を開発した。落ち着いたモノトーンの色使いで、そのまま料理を盛り付けて使用するほか、ランチョンマットとして器をのせて使うこともできる。もちろん、金属製のカトラリーで食事しても傷付きにくい。こちらは食材や器にこだわるフレンチやイタリアンのレストランでのニーズを見込んでいる。
 桐本代表は「普段買い物したり、建築材料を選んだりする際にごく自然に選択肢に上って、日常生活の中で使ってもらえるような漆の“当たり前化”を目指したい」と話す。

フランスでも可能性を模索

料理をおいしそうに際立たせる洋食用プレートの写真

 ところで、輪島キリモトの開発した洋食用プレートは「日本国内のみならず海外の生活様式にも使うことができる日本の技術が詰まった逸品」と評され、日本の優れた商品・サービスを認定し、国内外に発信するプログラム「OMOTENASHI Selection 2017」(OMOTENASHI NIPPON 実行委員会)に選ばれた。
 輪島キリモトは国内だけでなく、海外展開を視野に入れ、平成28年から活性化ファンドの後押しを受け、日本文化に対する関心が高いフランスで協働による商品開発や販路開拓にチャレンジしている。
 手始めとして今年3月にはパリのルーブル宮殿で開かれた食のイベント『JAPAN PRESENTATION in PARIS』でゲストが使用する食器の製造に取り組んだ。このイベントは花見をテーマとし、日本を代表するフラワーアーティストや和食料理人が会場の演出や料理を手がけた。輪島キリモトがこの日のために特別に作り上げた器はアスナロで作った7枚のトレイだ。料理を盛り付けて1枚ずつ提供され、食事を楽しんだ後は重ねて桐箱に収め、重箱としてゲストにプレゼントするという趣向に会場からは感嘆の声が上がった。今後も引き続き、海外展開の可能性を探るほか、プロモーション動画を作成し、国内外での広報活動に役立てる計画だ。


千すじシリーズ千すじシリーズ​​
天然木に麻布を貼り、地の粉と漆を特殊なはけで塗り込んで仕上げた千すじ高麗大皿(手前/本体価格:38,000円)と千すじ小椀(奥/本体価格11,000円)。表面硬度が高く、金属のスプーンなどを使っても傷が付きにくい。「ねず」「ベンガラ」の2色があり、どちらも最初は黒っぽい色だが、使い込むと前者はオリーブグリーンのような色に、後者は明るい褐色に変化する。それぞれ約50アイテムを展開する。

成功のエッセンス
  • 漆、輪島地の粉、布、和紙などの特性生かし、建築内装材として用途拡大
  • サンプルやカタログを制作して訴求力アップ
  • 伝統の技と素材を応用し、現代のライフスタイルに合わせた器を開発​

企業名

輪島キリモト​
住所小松市木場町イ-150-2​
TEL0761-43-8261​​​
事業内容商品の企画・開発、プロダクトデザイン、制作など​​​
創業平成12年5月​​​