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ロサンゼルス近郊に拠点開設 海外に和太鼓愛好者が増加中 ~(株)浅野太鼓楽器店

印刷ページ表示 更新日:2019年3月14日更新

ViVO いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集  いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集

2019.SPRING|VOL.06

CASE 04 浅野太鼓楽器店

浅野昭利代表の写真魂をゆさぶる
和太鼓文化を
未来へつなげたい。​

【活性化ファンド採択メニュー】
・2012年度 産業化資源活用事業(海外展開支援)

ロサンゼルス近郊に拠点開設 海外に和太鼓愛好者が増加中

ニーズつかんだ戦略を展開 教室事業中心に堅調に成長

2012年から進出

ASANO TAIKO U.S.で開く教室で練習に励む外国人の写真 直径3尺(1尺は約30.3センチメートル)以上の大太鼓で国内シェア70%を誇る老舗和太鼓メーカー・浅野太鼓楽器店では2012年、アメリカ・ロサンゼルス近郊のトーランス市にグループ会社「ASANO TAIKO U.S.」を設立した。翌13年には、販売店や修理工房、練習用スタジオ2部屋を備えた建築面積約340平方メートルの平屋建て社屋を建設。白山市の本社工場で製造した和太鼓を輸出するなど、アメリカで事業を始めるにあたっては、活性化ファンドを活用した。
 ASANO TAIKO U.S.が産声を上げてから6年がたち、現在まで年間6%ほどのペースで売り上げを伸ばし、「当社としてはもちろん、和太鼓メーカーがアメリカに拠点を構えるのもおそらく初めて」(浅野昭利代表)にもかかわらず、堅調に成長を続けている。
 中でも、海外事業の屋台骨となっているのが教室事業だ。ASANO TAIKO U.S.では、ジュニアやシニアといった年齢層、太鼓の種類などに応じて、毎日さまざまな教室を開講しており、現在400人もの受講生が通っている。
 もちろん、受講生の募集や現地スタッフの採用など、最初から順調だったわけではない。同社では、餅つきや流しそうめんなど、現地の人たちが日本文化に親しむ企画を考えたり、年に1度はホールを貸し切って発表会を開催したりするなど、さまざまなイベントを通して教室の認知度を高めていったという。

乾燥に強い特別仕様に

 現地の実情に応じたきめ細かな商品開発にも知恵を絞っている。和太鼓は革が緩むと音色が悪くなってしまうが、専門家の少ないアメリカで再度張り直すのは容易ではない。そこで、緩みの原因となる木の乾燥を抑えるため、国内では12%となっている材木の含水率を、海外向けは7%にまで下げてから革を張るようにしている。
 海外進出と同時期に導入したバチ製造用の自動切削装置も、現地で受け入れられる商品の製造に一役買った。通常、バチは左右で重さや形状が微妙に異なるが、この設備を使えば先端部分の形を同じにでき、重さの誤差も5グラム以内に抑えられる。左右均一のバチは、「どちらで叩いても同じ音が出せる」と、海外で人気商品の一つとなっている。このほかにも、現地の要望に応えて、胴の長さをわずかに縮めた太鼓も製造しており、アメリカの愛好者からは「音の跳ね返りが早く、気持ちがいい」と好評を得ている。
 また、「高音域が出て、リズムを刻むのに適している附締太鼓(つけしめだいこ)の需要が高まっている」と浅野代表。ニーズをつかんだ製造やアイテムの充実で、和太鼓の販売実績も徐々に増加している。

市場性の高さに期待

  同社が、アメリカ西海岸への進出に舵を切った理由の一つは、将来を見据えた市場性の高さだ。国内では、平成の大合併で全国に約3,200 あった自治体数が2007年ごろまでに約1,800へと大幅に減少した。浅野代表は、「和太鼓は地域のイベントなどで使われるケースが多い。市町村が少なくなった現状で、今以上に需要が高まるとは考えにくい。さらに、国内には和太鼓サークルが既に1万5,000チームほどあり、もはや成熟期を迎えている」と、日本市場を分析する。
2018年7月に開催したASANO TAIKO U.S.設立5周年を記念したコンサートの写真 一方で、浅野代表は、日本文化への関心が高まる海外には多くの可能性が期待できると指摘する。その第一歩として、日系人や日本企業が多く、海外でもとりわけ和太鼓が盛んなアメリカ西海岸を進出先に選んだのである。同社では、ロサンゼルス近郊を足がかりとし、海外市場の開拓により一層、力を注いでいく考えで、3年ほど前からアメリカ東海岸でも和太鼓のコンサートなどを盛り込んだ催しを開催。今後も、日本文化への関心が高いドイツ・フランクフルトや、和太鼓の愛好者が増えているアルゼンチン、ブラジルなどで、同様のイベントを企画していく予定だ。

和太鼓文化を未来へ

 さらに言えば、同社が海外に目を向ける根底には、事業的な側面にも増して、日本で培われてきた和太鼓の文化を世界に広めたいとの思いがある。「全身全霊を込めて打ち込む和太鼓の音は、聴く人の魂を揺さぶる。しかも、その感動は国籍に関係なく、万国共通だ」。こう熱心に語る浅野代表は、一般財団法人浅野太鼓文化研究所の理事長も務め、国内外での和太鼓の普及にも全力を傾けている。
 加えて、同社では、地球環境の保全と太鼓の資源確保を目的に「夢の木植林計画」を進めており、2003年から10年をかけて、社員総出で穴水町の山林に3万本のケヤキの苗を植えた。この木々が育って、実際に和太鼓の原料として使えるようになるのは300年後のことだという。和太鼓文化の拡大を第一義とする海外事業と同じく、同社が追い求めるのは目先の利益ではない。壮大なビジョンを掲げ、世紀を越えて思いを届ける種まきに取り組んでいる。


さまざまな種類の和太鼓の写真和太鼓​

写真手前の附締太鼓をはじめ、さまざまな種類の太鼓を製造。海外の気候や国民性なども考えた商品開発に知恵を絞っている。

 

 

 

成功のエッセンス
  • 将来を見据えた積極的な海外戦略
  • 現地のニーズに応える商品開発
  • 目先の利益に捉われないビジョン

企業名

株式会社浅野太鼓楽器店
住所 白山市福留町587番地1​
TEL 076-277-1717​
事業内容 各種太鼓製造販売・修理
設立 1978年4月​

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