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山中漆器とステンレスを融合 産地間連携で新たな魅力づくり ~(株)ウチキ

印刷用ページを表示する更新日:2019年3月14日更新

ViVO いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集  いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集

2019.SPRING|VOL.06

CASE 05 ウチキ

打出勇喜取締役の写真漆器に興味のない若い人が
手に取りたくなる
商品を目指します。

【活性化ファンド採択メニュー】
・2009年度 産業化資源活用事業(商品開発・事業化支援)
・2014年度 産業化資源活用事業(商品開発・事業化支援)

山中漆器とステンレスを融合 産地間連携で新たな魅力づくり

売り上げの約20%占める主力商品に成長

金箔ともコラボレーション

 山中漆器を製造、販売するウチキのヒット商品となっているのが、ステンレス製のビアカップやタンブラーに漆塗りを施した「漆磨(シーマ)」シリーズである。カップの外側は約400年以上の歴史を誇る山中漆器の技術が生み出す高級感と温かみにあふれたデザイン。内側は世界的にも評価の高い新潟県・燕三条の金属研磨技術を用いて仕上げられ、ビールを注げばきめ細かいクリーミーな泡立ちが楽しめる。
 2012年秋の発売以降、産地に伝わる「漆流し」の技法を用いて表面に模様を描いたものや蒔絵を施したもの、伝統工芸士が手塗りしたものなど、順次ラインアップを拡充しており、商品開発や展示会への出展など販路開拓を活性化ファンド事業が後押ししてきた。
 活性化ファンドの助成金を利用して開発された商品の一つが「金箔華」である。これは白檀(びゃくだん)塗りと呼ばれる漆を塗った後に金銀箔や金粉で装飾し、その上から透き漆を塗り重ねて仕上げたもの。落ち着いた漆の色合いと金箔の華やかさがうまく融合している。
 漆磨シリーズは百貨店や専門店、ネットショップなどで販売され、企業の記念品、プロゴルフトーナメントや競馬で関係者に配る土産品など、法人が特注品を依頼してくることも多い。中国人観光客をはじめ、外国人からの人気も高く、外務省や加賀市が海外の要人に手渡す土産品に選ばれたことも一度や二度でない。初年度から約6年間で販売数は3倍以上に伸び、今では同社の売り上げの約20%を占める主力商品として成長した。

中国人客のつぶやきがヒント

新潟県・燕三条とのコラボレーションは器にとどまらずカトラリーでも。漆の温かみが加わった魅力的な商品の写真 同社が漆磨シリーズの開発を始めたのは、打出浩喜社長の長男で、中国に4年間以上の留学経験を持つ打出勇喜取締役が現地で開かれた展示会に出展したことがきっかけだった。たまたま隣のブースに展示されていた燕三条のステンレスカップを見ていた中国人客が「これに漆が塗ってあれば面白い」とつぶやき、これをヒントに商品化の取り組みが始まった。
 開発にあたって一番の難所となったのがステンレスに漆を塗る工程である。ステンレスに直接漆を塗れば、弾いてしまって定着しない。そのため、打出社長は下塗り用の材料探しに奔走し、これはと思うものを片っ端から試験した。しかし、適した材料はなかなか見つからず、ようやく試作がうまくいっても、食品衛生上ふさわしくなく、実用化できないこともあった。
 最終的には塗料メーカーと連携し、オリジナルの材料を開発することで問題を解決した。漆を美しく塗るための技術的な工夫を凝らす必要があったことから、下塗りした後の加熱方法や温度、加熱時間を何度も見直した。
とはいえ、落としたり、指輪を付けたまま扱ったりすれば、傷が付いたり、漆がはがれてしまうこともあり、そんなときには有償でメンテナンスにも対応する。愛着を持って使い、一人の客が同じ商品を何度も修理に出してくれるケースもあり、打出社長は「長く大事に使ってもらえる商品として定着してきた」と手応えを話す。

異業種からも熱い視線

 打出社長は、漆磨シリーズのヒットは会社の成長だけでなく、産地にとっても意義が大きいと考えている。
 山中漆器では近年、漆では出せないナチュラルな木の質感を強調するため、ウレタン塗料で仕上げた漆器の人気が高まっている。しかし、ウレタン塗料はスプレーで塗るため、伝統的な技術を受け継ぐ職人の仕事が減ってしまう。その点、漆磨シリーズを作り上げるには職人の技術は欠かせない。新たな仕事の創出により、職人の収入が増えれば、後継者不足に歯止めをかける助けになるというわけだ。要望があれば、同業他社にも漆磨シリーズの販売代理業務を認めているのも、産地全体の活性化につながればとの思いからである。
 金属に漆を塗る技術の開発によって、これまで取引のなかった企業との商談が増えた点も大きな収穫だった。現在、機械部品メーカーからの依頼でペンスタンドを開発するほか、オーディオ機器に漆を塗りたいなど、さまざまな相談が寄せられる。
 「金属でも、ガラスでも、陶器でも、漆を塗ればそれは漆器。伝統的な漆器に興味がない若い人にも手にとってもらえる商品を作りたい」。打出取締役はそう話し、漆の新たな可能性の追求に意欲を燃やしている。

東京五輪に合わせ新商品

活性化ファンドの助成金を活用して出展した展示会の様子の写真 活性化ファンドを利用し、「企業に寄り添った事業で使い勝手がいい。ISICOの担当職員も親身に相談に乗ってくれる上、申請書を作成することで3年先、5年先の会社の針路づくりに役立った」と振り返る打出社長。今後は漆磨シリーズのバリエーションをさらに拡充し、現代のライフスタイルにマッチした商品開発を進める計画だ。
 また、伝統工芸品等を東京オリンピックの公式ライセンス商品化する「東京2020 ライセンシングプログラム」を活用し、外国人観光客向けにオリンピックをイメージした限定商品も企画する。すでに中国人観光客に好評を得ていることから、中国国内での流通網の確立も視野に入れる。漆磨シリーズのこれからの展開にも注目したい。


「漆磨(シーマ)」シリーズの写真「漆磨(シーマ)」シリーズ​​

山中漆器の技術を駆使して彩られた漆磨シリーズの商品。ビアカップの内側の下部には泡を作るらせん状の磨き筋を残し、上部は泡を細かくクリーミーにするため磨き込まれている。本体はステンレス製のほか、純銅製の商品もある。ぐいのみは日本酒の味を損ねないよう内側を24金のめっきで仕上げている。すべて越前和紙のコースターをセットにして販売する。

成功のエッセンス
  • 産地の枠を飛び越えて連携
  • 金属に漆を塗るための技術を開発
  • 商品ラインアップを次々と拡充

企業名

株式会社ウチキ
住所加賀市柏野町イ61-6
TEL0761-77-1616
事業内容漆器の製造、販売
創業1888年5月​