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九谷焼を中国市場で販売 現地ニーズに合わせ急須を開発 ~(株)シマサキ陶器

印刷用ページを表示する更新日:2019年3月15日更新

ViVO いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集  いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集

2019.SPRING|VOL.06

CASE 06 シマサキ陶器

嶋崎信之社長の写真これからも
中国人バイヤーとの
パイプを大切にして
拡販につなげていきます。
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【活性化ファンド採択メニュー】
・2012年度 産業化資源活用事業(海外展開支援)

九谷焼を中国市場で販売 現地ニーズに合わせ急須を開発

景徳鎮の事業者らと連携 花器や飾り皿も人気に

中国人が好む「後手(うしろで)型」

 九谷焼の製造・販売を手がけるシマサキ陶器では中国市場での販路拡大を加速させている。事業の立ち上げ時に活用したのが活性化ファンドの助成金だ。同業のトーホードー、白龍堂、米田陶香堂(いずれも能美市)と4社で海外展開グループを組織して申請し、採択後は中国市場を見据えた商品開発や展示商談会への出展などに役立て、現地における取引の足場を築いた。
広州で開いた展示会の様子の写真 成果の一つが世界的な陶磁器産地として知られる景徳鎮市の事業者らと開発した急須である。日本で急須と言えば、注ぎ口に対してほぼ直角の位置に棒状の持ち手が付く「横手型」が一般的だ。しかし、これは日本独自の形で、中国では注ぎ口の反対側に輪状の持ち手を付けた「後手型」が普及している。そこで、鋳込み成形で後手型の素地を作り、グループ各社がそれぞれ得意とする技術で上絵を施した。
 上絵のバリエーションは約20種類で、販促用のカタログも制作し、そろいの湯飲みとセットで上海市や杭州市、広州市の茶器店で販売した。中国製に比べると値は張るが、九谷焼の持ち味である鮮やかな色彩や純度の高い金銀箔を貼った個性あふれるデザインが好評を集めたほか、日本製に対する人気も高く、国内よりもロットの大きな注文が相次ぐなど、売れ行きは堅調に推移した。

2004年から景徳鎮と交流

 そもそも景徳鎮との交流が始まったのは2004年にさかのぼる。この年、「景徳鎮」という地名の誕生から千年を記念して開催された国際陶磁器博覧会に石川県九谷陶磁器商工業協同組合連合会が参加。九谷焼の優品を出品したほか、グループ各社の代表や作家を含め約20人が現地入りし、工房を訪ねるなどして親交を深めた。
 国際陶磁器博覧会は2年目以降、展示商談会として開催され、5日間でバイヤーら40万人が中国各地から来場する盛況ぶりだ。当初は安価な商品が売れ筋だったが、中国人の所得の伸びに伴って高額品も売れるようになった。購買力のある巨大市場として魅力を感じて中国人バイヤーと意見を交わすうち、持ち上がったのが九谷焼の急須の開発だった。
 中国人にとって茶は生活に欠かせないもので、誰もが気軽に、日常的に楽しむ習慣が根付いている。茶との関わりは日本人以上で、お気に入りの茶葉を入れた水筒を持ち歩き、外出先で湯をつぎ足しながら飲む人も多い。そのため、九谷焼を知ってもらうための最初のステップとしては茶器が欠かせないとの意見で一致。日本で主流の横手型は中国人にとって使いにくいため、後手型の開発に乗り出した。

展示商談会に積極的に出展

景徳鎮で開いた展示商談会の様子の写真

 開発で一番の難所となったのは、焼成時に持ち手の付け根にできる「やせ」と呼ばれるへこみだった。これは1,300℃の高温で焼き上げる際、持ち手の部分が先に乾燥して本体の素地を引っ張るためにできるもので、職人が長年培ってきたノウハウを駆使して解決した。上絵はグループ各社が中国市場を見据え工夫を凝らした。
 商品の完成後、2014年から2015年にかけては景徳鎮をはじめ、上海や広州、それに大規模な日用品の卸売市場が立地する義烏市で開催される展示商談会に積極的に出展。現地バイヤーとのパイプ作りに力を注ぎ、販路を広げた。
 シマサキ陶器の嶋崎信之社長は「展示商談会に出展する際は準備なども含め現地での滞在が10~14日にも及ぶ。商売になるかならないかを探っている状況の中、助成金が大きな支えとなった」と当時を振り返る。
 日本製に対する厚い信頼や九谷焼の魅力に加え、購買力の向上、陶磁器への関心の高さが追い風となり、売り上げは順調に拡大した。茶器はもちろん、花器や大きな飾り皿の人気が高く、富裕層を中心に作家ものの販売も伸びている。
 九谷焼の認知度も着実にアップし、2015年からはグループ単独で展示商談会を開催し、集客できるまでになった。

約200点が完売

 中国でのビジネス展開の道筋が付いたことを受け、グループは2017年3月に解散し、現在は各社が個別に販促活動を続けている。
 「当社では中国での販売額が活性化ファンドを利用する前に比べて4、5倍に増えた。国内需要の減少を中国市場が補ってくれている」と話す嶋崎社長は昨年から、これまで培ってきた人脈を生かし、東莞市で単独の展示商談会を開催している。「展示商談会では日本人の顔が見えることが大切」と嶋崎社長が毎回自ら足を運ぶほか、会場として博物館を借り上げ、作家による実演や説明も行う。こうした取り組みが信頼度の向上につながり、持ち込んだ200点ほどの商品が完売することもある。展示商談会は今年も3回開催する計画だ。また、中国人バイヤーとのつながりは年を追って強くなり、今では年に4回ほど石川まで直接買い付けに来てくれるようになった。
 消費者の生活スタイルの変化などを背景に、九谷焼の売り上げはピークを迎えたバブル期に比べ、約3分の1にまで落ち込んでいると言われる。人口減少時代に入った国内市場に代わって反転攻勢の鍵を握るのが購買力を増す中国市場であり、嶋崎社長は「これからも中国とのパイプを太くしていきたい」と腕まくりしている。


中国市場向けの急須の写真中国市場向けの急須​

中国人になじみのある、注ぎ口の反対側に持ち手を付けた「後手型」の急須。上絵には九谷五彩や金彩・銀彩を使って花鳥風月や幾何学模様を描いたものなど、約20種類のバリエーションをそろえた。現地では湯飲みとセットにして販売している。

成功のエッセンス
  • 現地のニーズに合わせた商品開発
  • 何度も展示商談会に出展して人脈づくり
  • 展示商談会には日本人が出向き信頼度アップ

企業名

株式会社シマサキ陶器​
住所能美市三道山町オ98
TEL0761-57-1015
事業内容九谷焼の製造・販売
設立1972年8月​