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山中漆器の技術を生かしたハイセンスな“容器”に活路 ~(有)素地のナカジマ

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ViVO いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集  いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事例集

2019.SPRING|VOL.06

CASE 07 素地のナカジマ

中嶋敏博社長の写真漆器の魅力が
アイテムの充実に
つながりました。

【活性化ファンド採択メニュー】
・2014年度 産業化資源活用事業(商品開発・事業化支援)

山中漆器の技術を生かしたハイセンスな“容器”に活路

継続した見本市への出展で事業の新たな柱に成長

500アイテムを販売

 塗りや装飾を施す前の山中漆器用樹脂製素地の製造を主力とする「素地のナカジマ」では、活性化ファンドを活用して販路開拓にあたった自社ブランド「SO-Q STYLE」が新たな事業の柱に成長している。
 SO-Q STYLE では、シャンプーやボディーソープを詰め替えて使うボトルをはじめ、ソープディッシュや歯ブラシスタンドなどの洗面系、洗濯用洗剤を入れるランドリー系と、さまざまな容器をラインアップ。2018年9月からは、米やコーヒー豆、調味料などを保存するストッカーの販売を開始してキッチン分野へも進出しており、総アイテム数は500種類にも上るという。
バス用品シリーズ「BEAR」の写真 これら多種多様な商品の最大の特色は、同社が携わってきた山中漆器の技を生かしたデザイン性と使い勝手の良さにある。例えば、バス用品シリーズの「BEAR」では、樹脂製容器にクマの形にマスキングテープを貼り、山中漆器で用いる塗料を塗っている。テープを貼っていた箇所は透明のまま残り、中にシャンプーなどを入れるとシロクマやパンダに色が付く遊び心あふれるユニークな商品だ。残量が分かりやすい実用性も兼ね備え、20代前半の女性を中心に好調な売れ行きを示している。
 さらに、ザラザラとした質感を施す乾漆の技法で仕上げたテラコッタシリーズや、トレイなどに用いるラバー塗装で滑りにくくしたランドリー用ボトルなども人気が高い。ほかにも、蒔絵柄のスクリーン印刷を施したり、塗料を盛り上げる盛絵の技法でアクセントを加えたりした商品もあり、山中漆器の多彩な技術で、樹脂そのものの色を使うことの多かった従来品とは一線を画す商品開発を進めている。

全国チェーンに販路開拓

 SO-Q STYLEの売り上げ拡大にあたっては、若い女性をターゲットとした積極的な商品開発に加え、見本市への出展も効果が大きかった。その最たるものが東京ビッグサイトで開かれる国内最大規模の展示会「インターナショナル・ギフト・ショー」で、同社では、2011年に新ブランドを立ち上げた当初から自社ブースを設置し、全国から集まるバイヤーに向けて売り込んできた。
 かつてないデザイン性に富んだ新たな容器ブランドに対して、出展1年目から来場者の評判は上々だった。とはいえ、手応えがそのまま売り上げに結び付いたわけではない。「いくら商品がよくても、実績のない新規参入メーカーがいきなり足場を築けるほど簡単ではなかった」と、中嶋敏博社長は振り返る。風向きが変わり始めたのは出展を始めてから3年目を迎えたころだ。継続して自社ブースを構える中で、徐々に認知度と信頼が高まっていった。
 加えて、活性化ファンド採択後の2014年からはブース面積を倍増し、より前のめりになって自社ブランドを発信。すると、翌年には、全国に展開する大手雑貨チェーンとの契約がまとまり、SO-Q STYLEの売り上げは約3倍にまで一気に膨らんだ。以来、現在まで右肩上がりで実績を伸ばしており、同事業はいまや会社全体の売り上げの20%を占めている。

漆器の可能性を模索

ホーロー風の塗装を施しているストッカーの写真

 同社がSO-Q STYLEの開発に乗り出した背景には、山中漆器にとどまらず、漆器産業全体が抱える課題が挙げられる。ライフスタイルの変化や担い手不足などから全国的に見て漆器の生産量は減少傾向にある。同社では、将来を見据えて山中漆器の新たな可能性を模索するとともに、培ってきた素地のノウハウを生かす新商品として、バス用品をはじめとした容器開発に活路を見いだしたのだ。
 もちろん、新分野への進出がとんとん拍子に進んだわけではない。課題となったのは、シャンプーなどに含まれる酸の影響だ。特に、2016年から販売を始めたランドリー系の詰め替え用ボトルの開発には頭を悩ませた。洗濯用洗剤は容器への影響が大きく、当初はコストを抑えるために、樹脂にそのままインクでデザインしていたが、すぐに色落ちしてしまった。
 インクを変えたり、フィルムでコーティングしたりと、さまざまな方法を試したがうまくいかず、「最終的には、山中漆器で用いるウレタン塗装をいったん施した上で、インクで絵を描くことで高い耐久性が得られた」と中嶋社長。新分野への進出が、山中漆器の実用性の高さを再確認するきっかけにもなっている。

SNSで販売を開始

 販売開始から8年がたち、一層の販路開拓を進める上で、中嶋社長が商機と捉えているのがSNSだ。2019年2月からSNSのショッピング機能を用いた販売をスタートさせた。
 「SNSを用いることで、お客様の意見を直接聞くチャンスが増える。事業を進める中で、売れ筋のシリーズも見えてきた。これらの情報を、アイテムの絞り込みや新商品の開発に生かしていきたい」と、中嶋社長は言葉に力を込める。10年後を見据えたステップとして海外進出という目標も描いており、同社では、将来的にSO-Q STYLEの事業を素地の製造と並ぶ大黒柱にまで育んでいく考えだ。


SO-Q STYLE商品の写真SO-Q STYLE

シャンプーなどの詰め替え用ボトルをはじめ、洗面用品や洗濯用洗剤のボトル、ストッカーなどを展開している。写真は2018年9月から販売を開始した「BEAR」シリーズ(各2,160円/税込み)。

成功のエッセンス
  • 伝統工芸の技を新たな商品に活用
  • ターゲットを絞った商品ラインアップの充実
  • 見本市などへの継続的な出展

企業名

有限会社素地のナカジマ​
住所 加賀市河南町ルの16
TEL 0761-57-1015
事業内容 山中漆器の素地となる樹脂成型品の製造
設立 1998年5月

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